『十五年越しの願いは、歪んだ家族に砕かれて――身ごもり秘書は幼馴染CEOの重すぎる執着愛から逃げられない』
***

「……え?」

ある日の夕方。

私は遼河さんから聞かされた話に、玄関先で固まった。

「もう一回言って」

「お義父さんは、リフォームが終わるまで別宅へ移る」

「それは聞いた」

「工期は半年程度」

「それも聞いた」

「なら何が問題なんだ」

「その別宅!」

遼河さんが僅かに眉を上げる。

「何が問題なんだ」

「何で私たちと同じマンションなの!?」

そう。

鷹宮家を全面リフォームすることになり。

当然、その間。

父もどこかへ移らなければならない。

そこまでは分かる。

分かるのだけれど。

よりによって。

父が半年間暮らすという別宅が――。

今、私と遼河さんが暮らしているマンションと同じだった。

後日、本人に問い詰めると。

「空いてたから」

父は平然と言った。

「空いてたから、じゃないでしょう!」

「何がだ」

「何でそんな都合よく同じマンションに別宅があるの!」

父は一瞬黙った。

その沈黙が。

ものすごく怪しかった。

「……お父様?」

「何だ」

「まさか」

嫌な予感がする。

「このマンション……」

父が視線を逸らす。

「お父様の?」

「そうだ」

「……」

「正確には、私の所有物件だ」

「建物ごと!?」

「ああ」

「聞いてないんだけど――!?」

また。

私の声が響いた。

私が帰国した時。

何の疑問も持たずに住み始めたマンション。

父が用意してくれた家。

まさか。

その一室だけではなく。

建物そのものが、父の所有だったなんて。

「じゃあ何?」

私は頭を抱えた。

「私、帰国してからずっと、お父様のマンションに住んでたの?」

「そうなるな」

「何で言わないの!」

「聞かれなかった」

「聞くわけないでしょう!」

隣では遼河さんが、完全に笑いを堪えていた。

「遼河さん、笑ってるでしょ」

「笑ってない」

「口元!」

「見るな」

――何か。

似たようなやり取りを、どこかで聞いた気がする。

やっぱり。

平穏なんて。

そう簡単にはやってこない。

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