『十五年越しの願いは、歪んだ家族に砕かれて――身ごもり秘書は幼馴染CEOの重すぎる執着愛から逃げられない』
***

それでも。

そんな騒がしい毎日の中で。

私のお腹は少しずつ丸みを増していった。

健診へ行くたび。

最初は小さな影のようにしか見えなかった命が。

少しずつ。

確かな形になっていく。

手が見えた。

足が見えた。

小さな心臓が、懸命に動いていた。

初めてその鼓動を聞いた時。

私は何も言えなかった。

ただ。

涙だけが勝手に溢れた。

本当に。

ここにいる。

私たちの子どもが。

生きている。

隣にいた遼河さんも。

その日は珍しく。

診察室を出てから、しばらく何も話さなかった。

「遼河さん」

「何だ」

「泣いた?」

「泣いてない」

「目、赤いよ」

「気のせいだ」

絶対。

泣いていた。

性別が分かった日。

先生から、

「女の子ですね」

と言われた瞬間。

私は隣を見た。

遼河さんは。

数秒。

本当に動かなかった。

「……女の子」

「うん」

「娘」

「そうだね」

もう一度。

「娘か……」

あまりにも真剣な顔で言うので。

思わず笑ってしまった。

「何?」

「いや」

遼河さんはしばらく考えたあと。

真顔で言った。

「男が寄ってきたらどうする」

「まだ生まれてもないよ!?」

「今から考えておく必要がある」

「ありません!」

――過保護。

間違いなく。

この人は過保護になる。

その日。

私は確信した。

そして。

遼河さんだけではなかった。

父。

母。

トーマス。

慎二。

真崎さん。

ジュリアン。

果ては充さんまで。

私が少し重いものを持とうとすれば止められ。

階段を上ろうとすれば気をつけろと言われ。

仕事をすれば休めと言われ。

少し返信が遅れれば、

『大丈夫?』

と誰かから連絡が来る。

「妊婦って、もっと自由じゃないの?」

と訴えても。

誰も聞いてくれなかった。

私一人に対して。

保護者が多すぎる。

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