『十五年越しの願いは、歪んだ家族に砕かれて――身ごもり秘書は幼馴染CEOの重すぎる執着愛から逃げられない』
***

そんな中。

季節は冬へ向かい。

街にイルミネーションが灯り始めた。

クリスマスイブ。

遼河さんと二人。

煌めく街を歩いた。

吐く息が白い。

街路樹には無数の光が瞬き。

通りにはクリスマスソングが流れている。

去年までなら。

こんな未来が来るなんて、想像もしていなかった。

手を繋いで。

お腹には娘がいて。

帰る場所もある。

それだけなのに。

胸の奥が、不思議なくらい満たされていた。

「寒くないか」

「大丈夫」

「本当に?」

「さっきから三回目」

「冷えたら困る」

「大丈夫だって」

「ならいい」

そう言いながら。

遼河さんは、自分のマフラーまで私の首へ巻こうとする。

「いらない!」

「寒いだろ」

「遼河さんが寒くなるでしょう!」

「俺は平気だ」

「私も平気!」

そんなことで言い合いながら。

気づけば。

二人とも笑っていた。

幸せというものは。

もっと静かなものだと思っていた。

穏やかで。

柔らかくて。

ただ、そこにあるもの。

でも。

私の周りにある幸せは。

どうやら少し違うらしい。

騒がしくて。

過保護で。

時々面倒で。

予告もなく何かが決まって。

驚いて。

怒って。

結局、最後には笑っている。

それでも。

どうしようもないくらい温かかった。

***

年が明ける頃には。

お腹も随分大きくなっていた。

出産予定日が近づくにつれ。

今度は、私より周囲の方が落ち着かなくなった。

父からは、ほぼ毎日連絡が来る。

母からも。

慎二からも。

『まだ?』

と聞かれる。

「赤ちゃんに聞いてよ」

そう返したら。

慎二から、

『聞けるなら聞いてる』

と返ってきた。

――知らないよ。

そして。

私たちには。

もう一つ。

決めていたことがあった。

娘の名前。

――梨杏。

りあん。

何度も。

二人で呼んでみた。

「梨杏」

夜。

遼河さんが、私のお腹へ向かって声をかける。

すると。

まるで聞こえているかのように。

ぽこん、とお腹が動いた。

「あ、今蹴った」

「ああ」

「分かる?」

遼河さんがそっと手を置く。

少し待つ。

もう一度。

ぽこん。

「……動いた」

「ね?」

その瞬間。

遼河さんの顔が。

信じられないほど柔らかくなった。

会社で藤和CEOと呼ばれ。

誰が相手でも冷静で。

あれだけ容赦なく人を追い詰める人が。

娘がお腹を蹴っただけで。

こんな顔をする。

私は、その横顔を見るのが好きだった。

もうすぐ。

会える。

あと少し。

あと少しで。

私たちは。

三人になる。

そして――。

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