『十五年越しの願いは、歪んだ家族に砕かれて――身ごもり秘書は幼馴染CEOの重すぎる執着愛から逃げられない』
***

そして春。

私はKSサイエンスへ復職した。

久しぶりの仕事。

久しぶりの会社。

――のはずなのに。

「藤和CEO」

「何だ」

「これ、公私混同じゃない?」

「何が」

「私の予定、明らかに軽くされてない?」

「気のせいだ」

「絶対違う」

「気のせいだ」

復帰しても。

過保護な夫は、何も変わらなかった。

むしろ。

娘という守る対象が一人増えたことで。

前より悪化している気さえする。

「午後の会議、私も出る予定だったよね?」

「変更した」

「何で?」

「梨杏の健診だろ」

「午前中で終わるけど」

「疲れる」

「誰が?」

「お前が」

「……元気なんだけど」

「俺が心配する」

「それ、私の体調関係なくない?」

「ない」

開き直った。

藤和CEO。

会社で一番偉い人が。

完全に開き直った。

***

そして夏。

あの事件から長い時間が経ち。

ようやく本当の意味で一区切りついた頃。

KSサイエンスでは、事件解決への協力に対する慰労も兼ねて、旅行へ行くことになった。

行き先は――。

カリフォルニア。

「……待って」

参加者一覧を見た私は、思わず顔を上げた。

「何だ」

「これ、慰安旅行?」

「そうだ」

「会社、大丈夫?」

遼河さんが黙る。

「藤和CEO?」

「問題ない」

「この人数で?」

「問題ない」

「絶対?」

「……たぶん」

「今、“たぶん”って言った!」

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