『十五年越しの願いは、歪んだ家族に砕かれて――身ごもり秘書は幼馴染CEOの重すぎる執着愛から逃げられない』
***

それから数か月。

季節は巡り。

再び、クリスマス。

今年も。

我が家は静かなクリスマス――。

になるわけがなかった。

庭いっぱいに灯されたイルミネーション。

長いテーブル。

料理。

ケーキ。

そして。

あちこちから響く笑い声。

今年も。

大パーティーである。

一歳九か月になった梨杏は、庭を元気いっぱい走り回っていた。

「ママー!」

「はいはい」

「パパー!」

遼河さんが振り返る。

「ジイジー!」

父が即座に反応する。

そして。

「まゆー!」

母。

「シー!」

慎ちゃん。

「ジュー!」

ジュリアン。

「トー!」

トーマス。

最後に。

「まさー!」

真崎を見つけた瞬間。

梨杏が全力で走り出した。

「おい、危ないぞ」

真崎が慌ててしゃがむ。

梨杏はそのまま胸へ飛び込んだ。

ぎゅっ。

そして。

すりすり。

「……またやってる」

私が呟く。

隣で遼河さんが眉間に皺を寄せる。

「何であいつなんだ」

「お気に入りなんじゃない?」

「納得いかない」

「嫉妬?」

「違う」

「してるじゃん」

「してない」

私は笑いながら。

手にしていたグラスを、軽く叩いた。

「皆さーん!」

ざわめいていた庭が静かになる。

一斉に視線が集まった。

遼河さんもこちらを見る。

そして。

その顔が。

ものすごく嫌そうになった。

「……綾乃」

「何?」

「嫌な予感しかしない」

真崎まで梨杏を抱いたままこちらを見る。

「俺もです」

ジュリアンが眉を上げた。

「今度は何です?」

「何、その反応」

慎ちゃんが言った。

「姉さんが全員集めて何か言う時、だいたい大事件だから」

「失礼な」

「前科あるでしょう」

ある。

大会議室。

否定できない。

私は気を取り直して、にっこり笑った。

「では!」

「嫌な予感しかしない」

遼河さんがもう一度言う。

無視。

「クリスマスプレゼントの報告でーす!」

「何」

「今年最大の!」

「綾乃」

「実は――」

一度。

息を吸う。

今回は。

誰にも言っていない。

父にも。

母にも。

慎ちゃんにも。

ジュリアンにも。

真崎にも。

そして――。

遼河さんにも。

「妊娠しましたー!」

< 154 / 162 >

この作品をシェア

pagetop