『十五年越しの願いは、歪んだ家族に砕かれて――身ごもり秘書は幼馴染CEOの重すぎる執着愛から逃げられない』
母が目を細めた。

「綾乃……まさか」

「なんと!」

「なんと?」

全員が恐る恐る聞き返す。

私は両手を広げた。

「三つ子でーす!」

沈黙。

一秒。

二秒。

三秒。

「…………」

遼河さんの顔から。

完全に表情が消えた。

父も。

母も。

トーマスも。

慎ちゃんも。

ジュリアンも。

真崎も。

志水さん夫妻も。

誰一人として。

すぐには言葉が出なかった。

そして。

「えええええええええ――――っ!?」

夜空へ。

とんでもない大歓声が響き渡った。

「三つ子!?」

「三人!?」

「本当に!?」

「病院は!?」

「予定日は!?」

「綾乃、大丈夫なの!?」

質問が。

四方八方から一斉に飛んでくる。

「待って! 一人ずつ!」

「綾乃!」

遼河さんがようやく動いた。

人を掻き分けるようにして、私の前へ来る。

「何?」

「三つ子って……」

「うん」

「本当に?」

「本当に」

「三人?」

「だから三つ子」

「……三人」

完全に処理が追いついていない。

こんな遼河さん。

初めて見たかもしれない。

その足元へ。

梨杏がとことこと走っていく。

「パパー?」

「……梨杏」

「ん?」

遼河さんが娘を抱き上げる。

それから。

私を見る。

まだ。

少し呆然としている。

「子どもが……四人になるのか」

私は笑った。

「そうだね」

「……一気に?」

「一気に」

「……」

「頑張ろうね、パパ」

遼河さんが。

深く。

本当に深く息を吐いた。

それから。

ようやく笑った。

「お前には、一生勝てる気がしない」

「何それ」

「そのままの意味だ」

梨杏が私へ手を伸ばす。

「ママー!」

私はその小さな手を握った。

周りでは。

すでに三つ子の話で大騒ぎになっている。

部屋をどうする。

ベビーベッドは三つ必要なのか。

車はどうする。

佐知子さんへ連絡しろ。

いや。

今すぐするな。

母は、日本へ来る期間を増やすと言い出し。

トーマスまで何やら本気で予定を確認し始める。

慎ちゃんは、

「一気に甥か姪が三人増えるの!?」

と頭を抱え。

ジュリアンは、なぜか冷静に今後のスケジュールを確認し。

真崎は梨杏を抱いたまま。

明らかに逃げ道を探している。

私はそれを見逃さなかった。

「真崎」

「何ですか」

「三人増えてもよろしくね」

「何で俺が頭数に入ってるんですか」

「まさー!」

梨杏がぎゅっと抱きつく。

真崎が黙った。

「……ほら」

「この子だけですからね」

「三人も懐くかも」

「やめてください」

笑い声が弾けた。

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