『十五年越しの願いは、歪んだ家族に砕かれて――身ごもり秘書は幼馴染CEOの重すぎる執着愛から逃げられない』
私は。

その光景を見ながら。

ふと、思う。

昔の私は。

家族というものが。

よく分からなかった。

同じ家に住んでいるのに。

誰より遠かった人たち。

血が繋がっているから家族なのか。

同じ名字だから家族なのか。

ずっと。

分からなかった。

家族なのに傷つける人がいて。

血が繋がっていなくても守ってくれる人がいて。

離れていても。

ずっと想ってくれていた人がいて。

そして。

十五年経っても。

変わらず私の手を取ってくれた人がいた。

だから。

今なら分かる。

家族は。

誰かに決められるものじゃない。

一緒に笑って。

怒って。

心配して。

時には鬱陶しいほど構われて。

喧嘩もして。

驚かされて。

それでも。

最後には同じ場所で笑っている。

帰ってきたいと思える場所を。

一緒に作っていく人たちなのだ。

遼河さんが隣へ来た。

梨杏を片腕に抱いたまま。

空いている手で。

私の手を握る。

「綾乃」

「ん?」

「幸せか?」

私は周りを見た。

笑っている父。

母。

トーマス。

慎ちゃん。

ジュリアン。

真崎。

志水さん夫妻。

そして。

私たちの娘。

私のお腹の中にいる。

これから生まれてくる、三つの命。

一度は。

全部なくしたと思っていた。

家族も。

居場所も。

未来も。

願いも。

でも。

違った。

十五年前に願ったものは。

私が想像していたより。

ずっと大きくなって。

今。

ここにある。

答えなんて。

決まっている。

「うん」

遼河さんの手を握り返した。

「ものすごく」

遼河さんが笑う。

私も笑った。

長い年月をかけて。

私はようやく。

願っていた場所へ辿り着いた。

そして。

分かったことが一つだけある。

幸せって。

どうやら。

静かなものじゃないらしい。

旅行だって全員参加。

クリスマスだって大騒ぎ。

妊娠報告をすれば。

夜空に響くほど叫ばれる。

これからは。

子どもが四人。

きっと今以上に騒がしくなる。

だけど。

それでいい。

たぶん。

それこそが。

私が十五年間。

ずっと願い続けていたものだから。

少なくとも。

私たちの場合。

幸せとは――。

騒がしくて。

温かくて。

どうしようもなく愛おしいもの。

――絶対に。

――完――
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