『十五年越しの願いは、歪んだ家族に砕かれて――身ごもり秘書は幼馴染CEOの重すぎる執着愛から逃げられない』
そんなやり取りをしていると、玄関の方から聞き慣れた声がした。

「姉さん」

「慎ちゃん?」

振り返ると、慎ちゃんが靴を脱ぎながらこちらへ入ってくるところだった。

「おはよう」

「おはよう。何で朝からいるの?」

「会長を迎えに来た」

「……会長?」

一瞬考えて。

私は、さっき梨杏と一緒に出ていった人を思い出した。

「ああ。お父様なら、梨杏を学校まで送って行ったよ」

「は?」

慎ちゃんの顔が止まった。

「車で?」

「うん」

「今日、歩いて登校するって昨日言ってなかった?」

「私もそう聞いてた」

「……父さん」

慎ちゃんが額を押さえる。

「朝一で打ち合わせあるんだけど」

「知らないよ」

「俺、わざわざ会長迎えに来たんだけど」

「梨杏には勝てないんじゃない?」

「会社より孫優先する会長ってどうなの?」

「本人に言って」

二十五歳。

あんなに生意気だった弟は、今では鷹宮グループの副社長になっている。

父のすぐそばで会社を支え、若いながらも重要な仕事を任されるようになった。

……もっとも。

生意気なのは、今も大して変わっていないけれど。

「シー!」

慎ちゃんを見つけた花梨が、ぱっと顔を輝かせて走ってきた。

「シー!」

真凜も続く。

「シー!」

当然、由羅まで。

「待って待って!」

あっという間に、慎ちゃんが三人に取り囲まれる。

「俺、会社行くんだけど!」

「遊ぼー!」

「無理!」

「シー!」

「服引っ張るな!」

その様子が可笑しくて、私は思わず笑った。

「副社長、大人気」

「姉さん助けて!」

「自分で何とかして」

「酷い!」

その横では、玲音まで遼河さんの腕の中から慎ちゃんへ手を伸ばしている。

「シー」

慎ちゃんが固まった。

「……玲音まで?」

「大人気だね」

「嬉しいけど、今じゃない!」

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