【完結済】すべて失った廃妃のはずが、隣国で幸せになりました ~ 追放先で加護の力が復活し、新王妃として大歓迎されています ~
21.
特に重篤な症状の病人たちについて記録を取り、王宮から持参した薬草を煎じて飲ませながら、一人ひとりに言葉をかけて回る。
その後慰問品を運び込み、次回の訪問予定について院長と話し、ようやく最初の救護院を後にした。
王都には苦しい状況に置かれた施設が、まだいくつもあるのだ。準備してきた食料だけでは到底足りないことを痛感する。次回からは配給量を増やし、定期的に物資を運び込む体制を急いで整えなければならない。
(王宮の備蓄の見直しと……、他にもどこかに余剰物資があるようならば、それらの再配分を急がなければならないわ)
そう考えを巡らせながら、建物を出て馬車へと向かう。すると、目の前に人が立っていることにふと気付いた。
見るとそれは、最初に石を投げてきた少年だった。
彼は唇を引き結び、どこか困ったような、ばつの悪そうな顔をしていた。
私が近付くと、少年は小さく声を漏らした。
「……ごめんなさい」
(……あ……)
石を投げたことに対する謝罪なのだと、すぐに気付いた。素直なその態度に、胸がじんとする。
私は少し身を屈め、彼に視線を合わせて言った。
「こちらこそ、これまで放ったらかしにしていてごめんなさい。これからはできる限り頻繁に来るわ。……自分よりも小さな子たちを守ろうとするあなたは、とても立派よ。次に私が来る日まで、子どもたちをお願いね」
そう伝えると、少年は目を見開いて私の顔を見る。そしてまた唇をぎゅっと閉じると、力強く頷いた。
こんな子どもが、大人たちの愚かな行動の代償を払わされていいはずがない。未来への希望さえ持てない中、飢えや恐怖と戦いながら生きている現状を、見過ごしていいはずがないのだ。
(だからこそ、この王国の王妃となった私が、この子たちを守っていかなくては……!)
強い決意を胸に抱き、私は次の施設へと向かったのだった。
結局その日、王宮に帰ったのは日が暮れてからだった。途中で一度王宮に戻って再び出発し、回れたのは一日で二軒だけ。予想以上に深刻な状況で慰問品が足りず、王宮の備蓄庫から追加の食料を出すために戻る必要があったのだ。
その日以降、私は連日施設の慰問に赴いた。
児童養護施設、救護院、負傷兵らの療養所に、炊き出し所。それらを回るたび、もはや一刻の猶予もない状況だと感じた。
エミナやロゼルには負担をかけたはずだけど、彼女たちは少しも嫌な顔をすることなく私に付き添い、補佐してくれた。
同行する騎士団員は、日によって替わったが、ヴォルグだけは、毎日必ず慰問についてきた。
セルジュ様は、相変わらず外交関係のやり取りや会議に追われているようで、あの夕食の時以降また顔を合わせない日々が続いた。
もっと会話をしたいという気持ちはあったけれど、ひとまずは私も自分のなすべき仕事に集中することにした。
「セルジュ様の体調は大丈夫なのかしら。連日公務に明け暮れているようだけれど」
ある日の慰問に向かう時、馬車に乗り込む前に私がそう言葉を漏らすと、ヴォルグがすかさず返事をした。
「疲労はかなり蓄積していらっしゃるようですが、今のところは持ちこたえておられます」
「……そう」
どうやら彼は、セルジュ様のご様子を把握しているらしい。おそらく私の行動に関しては、このヴォルグが定期的に報告を入れているのだろう。
私は各施設を回り、収容人数や配給状況を整理し、王宮の備蓄帳簿と照らし合わせた。
中抜き云々以前に、前王の時代から配給の手続きが滞り、まともに届いていない状況だったのだ。
滞っていた物資については、王宮の備蓄庫から優先的に回すよう指示を出す。また、各施設周辺の空き地についても調査を進め、耕作に使える場所の確保に取りかかった。
王宮の備蓄だって、もう心もとない量なのだ。このままでは配給はいずれ底をつき、民はますます飢えることになる。各施設で可能な限り食料を確保できる環境を作る必要があった。
また、王都にいる医師の所在を全て調べさせ、巡回の順序を組み直し、重篤な病人がいる施設に優先的に診療に行ってもらえるよう手配した。
どこへ行っても、初めは皆から同じ反応をされた。敵意のこもった眼差しを向けられ、今さら何をしに来たと詰られる。
逼迫した現状を激しい言葉で訴えてくる民たちに対し、私は戦を始めた王家の愚行と、長く支援を怠っていたことについて真摯に謝罪を重ねた。そして誠意を行動で示すべく、一心不乱に働いた。
その後慰問品を運び込み、次回の訪問予定について院長と話し、ようやく最初の救護院を後にした。
王都には苦しい状況に置かれた施設が、まだいくつもあるのだ。準備してきた食料だけでは到底足りないことを痛感する。次回からは配給量を増やし、定期的に物資を運び込む体制を急いで整えなければならない。
(王宮の備蓄の見直しと……、他にもどこかに余剰物資があるようならば、それらの再配分を急がなければならないわ)
そう考えを巡らせながら、建物を出て馬車へと向かう。すると、目の前に人が立っていることにふと気付いた。
見るとそれは、最初に石を投げてきた少年だった。
彼は唇を引き結び、どこか困ったような、ばつの悪そうな顔をしていた。
私が近付くと、少年は小さく声を漏らした。
「……ごめんなさい」
(……あ……)
石を投げたことに対する謝罪なのだと、すぐに気付いた。素直なその態度に、胸がじんとする。
私は少し身を屈め、彼に視線を合わせて言った。
「こちらこそ、これまで放ったらかしにしていてごめんなさい。これからはできる限り頻繁に来るわ。……自分よりも小さな子たちを守ろうとするあなたは、とても立派よ。次に私が来る日まで、子どもたちをお願いね」
そう伝えると、少年は目を見開いて私の顔を見る。そしてまた唇をぎゅっと閉じると、力強く頷いた。
こんな子どもが、大人たちの愚かな行動の代償を払わされていいはずがない。未来への希望さえ持てない中、飢えや恐怖と戦いながら生きている現状を、見過ごしていいはずがないのだ。
(だからこそ、この王国の王妃となった私が、この子たちを守っていかなくては……!)
強い決意を胸に抱き、私は次の施設へと向かったのだった。
結局その日、王宮に帰ったのは日が暮れてからだった。途中で一度王宮に戻って再び出発し、回れたのは一日で二軒だけ。予想以上に深刻な状況で慰問品が足りず、王宮の備蓄庫から追加の食料を出すために戻る必要があったのだ。
その日以降、私は連日施設の慰問に赴いた。
児童養護施設、救護院、負傷兵らの療養所に、炊き出し所。それらを回るたび、もはや一刻の猶予もない状況だと感じた。
エミナやロゼルには負担をかけたはずだけど、彼女たちは少しも嫌な顔をすることなく私に付き添い、補佐してくれた。
同行する騎士団員は、日によって替わったが、ヴォルグだけは、毎日必ず慰問についてきた。
セルジュ様は、相変わらず外交関係のやり取りや会議に追われているようで、あの夕食の時以降また顔を合わせない日々が続いた。
もっと会話をしたいという気持ちはあったけれど、ひとまずは私も自分のなすべき仕事に集中することにした。
「セルジュ様の体調は大丈夫なのかしら。連日公務に明け暮れているようだけれど」
ある日の慰問に向かう時、馬車に乗り込む前に私がそう言葉を漏らすと、ヴォルグがすかさず返事をした。
「疲労はかなり蓄積していらっしゃるようですが、今のところは持ちこたえておられます」
「……そう」
どうやら彼は、セルジュ様のご様子を把握しているらしい。おそらく私の行動に関しては、このヴォルグが定期的に報告を入れているのだろう。
私は各施設を回り、収容人数や配給状況を整理し、王宮の備蓄帳簿と照らし合わせた。
中抜き云々以前に、前王の時代から配給の手続きが滞り、まともに届いていない状況だったのだ。
滞っていた物資については、王宮の備蓄庫から優先的に回すよう指示を出す。また、各施設周辺の空き地についても調査を進め、耕作に使える場所の確保に取りかかった。
王宮の備蓄だって、もう心もとない量なのだ。このままでは配給はいずれ底をつき、民はますます飢えることになる。各施設で可能な限り食料を確保できる環境を作る必要があった。
また、王都にいる医師の所在を全て調べさせ、巡回の順序を組み直し、重篤な病人がいる施設に優先的に診療に行ってもらえるよう手配した。
どこへ行っても、初めは皆から同じ反応をされた。敵意のこもった眼差しを向けられ、今さら何をしに来たと詰られる。
逼迫した現状を激しい言葉で訴えてくる民たちに対し、私は戦を始めた王家の愚行と、長く支援を怠っていたことについて真摯に謝罪を重ねた。そして誠意を行動で示すべく、一心不乱に働いた。