死病の花嫁は薬商伯爵に溺愛される~大正政略結婚、不遇令嬢の幸福論~
「学びたいなら、本屋に行こう」
不意に私たちの背後から声が聞こえた。
振り返ると、そこに立っていたのは篤志さんだった。
どうやら、早めに仕事から戻ってきたところで、私たちの会話を偶然聞いていたらしい。
「お、お兄様……いつから」
千草さんが顔を真っ赤にして立ち上がる。
「途中からだ。お前がそんなふうに思っていたとは、俺も知らなかったな」
篤志さんの声は、いつもよりずいぶん柔らかかった。
叱っているときの厳しい声音ではなく、ただ静かに受け止めているみたいに優しい。
「父上の考え方のような古い習慣は、簡単には変えられない。だが本を読むことくらい、誰にも咎めさせるつもりはない」
「本当に?」
篤志さんは静かにうなずくと、私にも視線を向けた。
「琴乃、付き合ってくれるか? 本屋まで」
「はい。もちろんです」
私が了承すると、千草さんはとまどいながらも小さく手を挙げて「私も行きたい」とつぶやいた。
思い立ったが吉日。こうして、私たち三人は連れ立って本屋へと向かうことにした。
車の中、千草さんはずっと落ち着かない様子で、両手を膝の上でもじもじと動かしていた。
その姿は十八歳という実年齢らしくて、私は思わず口もとを緩めてしまう。
不意に私たちの背後から声が聞こえた。
振り返ると、そこに立っていたのは篤志さんだった。
どうやら、早めに仕事から戻ってきたところで、私たちの会話を偶然聞いていたらしい。
「お、お兄様……いつから」
千草さんが顔を真っ赤にして立ち上がる。
「途中からだ。お前がそんなふうに思っていたとは、俺も知らなかったな」
篤志さんの声は、いつもよりずいぶん柔らかかった。
叱っているときの厳しい声音ではなく、ただ静かに受け止めているみたいに優しい。
「父上の考え方のような古い習慣は、簡単には変えられない。だが本を読むことくらい、誰にも咎めさせるつもりはない」
「本当に?」
篤志さんは静かにうなずくと、私にも視線を向けた。
「琴乃、付き合ってくれるか? 本屋まで」
「はい。もちろんです」
私が了承すると、千草さんはとまどいながらも小さく手を挙げて「私も行きたい」とつぶやいた。
思い立ったが吉日。こうして、私たち三人は連れ立って本屋へと向かうことにした。
車の中、千草さんはずっと落ち着かない様子で、両手を膝の上でもじもじと動かしていた。
その姿は十八歳という実年齢らしくて、私は思わず口もとを緩めてしまう。