死病の花嫁は薬商伯爵に溺愛される~大正政略結婚、不遇令嬢の幸福論~
「どうされたのですか?」
「冬馬様が急に高い熱を出されて、うなされているんです。若奥様はかなり気が動転されていて、実家の天澤家なら薬が豊富にあるはずだから取りに行くように、と……」

 冬馬くんは鈴子さんの息子で、まだ七歳。
 彼女が実家によく顔を出していたのは、もしかしたら夫との関係がうまくいっていない事情もあったのかもしれない……。そんな考えが一瞬よぎったものの、今はそれどころではなかった。

「かかりつけのお医者様にすぐに来てもらいなさい!」

 そばで聞いていたお義母様が、動揺した顔をして声をあげた。
 その意見は正しい。うちへ薬を取りに来る前に、まずはお医者様を呼ばないと。

「そ、それが……いつも診てくださってるお医者様が不在のようで、連絡が取れないんです。別の方に来てもらうよう手配はしているのですが……」

 こんなときに限って、すぐに診てもらえないなんて……。鈴子さんも気が気じゃないだろう。
 
「私が一緒に行きます。準備するので少しだけ待ってください」

 迷いなくそう告げ、我が家にあった消毒液と、解熱の効果があると言われる数種類の生薬を手早くまとめた。
 荷物を持って玄関へ向かおうとしたところで、廊下の先から篤志さんが歩いてくる。
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