死病の花嫁は薬商伯爵に溺愛される~大正政略結婚、不遇令嬢の幸福論~
「琴乃さん……」
「事情は聞きました。冬馬くんは?」
「奥の部屋よ……お願い、助けて!」

 案内され、私はすぐに冬馬くんのもとへ向かった。
 布団に横たわる冬馬くんは、高熱によって顔を赤く火照らせ、苦しそうに息をしていた。
 額や首筋に触れてみると、火がついたように熱い。熱は全然下がっていないようだ。

「大丈夫よ。すぐに良くなるわ」

 優しく声をかけながら、私は冬馬くんの隣に膝をついた。

「篤志、お薬は持ってきてくれたのよね?」

 鈴子さんがすがるような目で篤志さんを見上げた。声はかすれていて、瞳からは大粒の涙がこぼれている。

「ああ、持ってきた。しかし、ちょっと落ち着こう」

 篤志さんは鈴子さんの肩に手を置き、背中を撫でていた。

「母親が取り乱していたら、冬馬だって不安になるだろう?」
「そ、そうね」

 彼の言葉に、鈴子さんは唇を震わせながらも納得してうなずいた。
 篤志さんの落ち着いた声には、不思議と人を安心させる力がある。

「お義姉様、いつからこの状態なのですか?」

 振り返って尋ねると、鈴子さんは涙で濡れた頬を拭い、記憶をたどるようにしながら答えた。

「今朝から、なんとなく元気がなくて……。ご飯もあんまり食べなかったの。おかしいと思っていたら、お昼過ぎから咳をし始めて、気づいたら高熱を出していて……」

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