死病の花嫁は薬商伯爵に溺愛される~大正政略結婚、不遇令嬢の幸福論~
 その言葉を裏付けるように、布団の中で冬馬くんがケホケホと小さく咳き込んだ。
 小さな子が苦しそうに眉根を寄せる顔を見ていると、こちらまで胸が締めつけられる。

「汗はかいていますか?」
「汗は……そういえば、あまりかいていないみたい」

 私は冬馬くんの脇の下にそっと触れてみる。
 身体は熱いものの、汗ばんではいない。私にははっきりと判断がつかないけれど、おそらく喉は腫れているだろう。
 だけど医者ではない私の知識で、小さい子に下手に薬を飲ませたら、かえって危険かもしれない。

「薬はいろいろ持ってきました。ですが、まずはお医者様の到着を待ちましょう。私の判断だけで、お薬を飲ませるわけにはいきませんから」

 そう告げると、鈴子さんは私の意見を聞いてコクリと頷いた。

「そうよね……ごめんなさい。気が動転してしまって」
「いいえ。お気持ち、よくわかります」

 私は冷たい水で濡らした手ぬぐいを冬馬くんの額にのせ、寝間着の襟もとを少し緩める。
 水分だけは摂らせておいたほうがいいと判断して、鈴子さんに用意してもらった水と砂糖と塩で飲み物を作って飲ませた。

 それからしばらく、私たちは祈るような気持ちで冬馬くんのそばに付き添っていた。
 咳をするたびに、鈴子さんの肩がびくりと震える。私は少しでも落ち着くようにと、その手を静かに握った。
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