死病の花嫁は薬商伯爵に溺愛される~大正政略結婚、不遇令嬢の幸福論~
「お手伝いします」
「お嬢さんが?」
「はい。父が医者でしたので、少しだけ心得があります」

 お医者様は驚いた顔をしつつも、すぐに「それは頼もしい」と微笑んでくれた。
 
「妻はこういうとき頼りになるんです」

 隣にいた篤志さんが、誇らしげにそう付け加える。
 人前で褒められたことに気恥ずかしさを覚えながらも、嬉しくて胸の奥がじんわりと温かくなった。

 とりあえず今夜はこのまま様子を見て、明日また診察に来てくれるとのことで、私たちはお医者様をていねいにお見送りした。
 そのあと私は葛根湯を煎じ、少し冷ましてから冬馬くんの口もとにそっと運ぶ。

「その生薬……そんなにトロトロしているけど大丈夫?」

 隣で見ていた鈴子さんがそう聞いてきた。お医者様から許可が出たとはいえ、不安になったのだろう。

「漢方が七種類混ざっているんですが、主な成分は‟葛の根”なんです」

 私の言葉を聞いた鈴子さんは、だからとろみがついているのかと、納得したようだ。

「冬馬くん、飲めるかしら? これを飲めば、きっと楽になるわよ」

 うっすらと目を開けた冬馬くんは小さくうなずき、身体をゆっくりと起こして薬湯を飲み干してくれた。

 それからしばらくすると、冬馬くんの呼吸はしだいに落ち着き、苦しそうだった表情も和らいでいった。
 寝息を立て始めた我が子を見て、鈴子さんはようやく安堵の涙をこぼす。
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