死病の花嫁は薬商伯爵に溺愛される~大正政略結婚、不遇令嬢の幸福論~
第九章 義母の告白、そして寄り添うふたり
 それから一週間が経った。
 冬馬くんは、翌日には熱が下がり、今ではかなり回復しているみたいだ。

 あの夜以来、鈴子さんは屋敷を数回訪れているけれど、以前とは見違えるほどやわらかな笑みを向けてくれるようになった。
 千草さんも、暇さえあれば例の本を熱心に読みふけっていて、感想を伝えてくれる。
 だけどお義母様だけはさほど変わらなかった。
 以前よりは、私を見る目の刺々しさは多少薄れた気がするけれど、言葉を交わす機会は今もほとんどなく、相変わらず一定の距離を保ったままだ。

 昼下がり、縁側を通りかかったとき、視線の先にお義母様の姿を見つけた。
 庭を眺めながら、ひとり静かにお茶を飲んでいる。いつもの威圧的な雰囲気はなく、どこか物思いにふけっているような様子だった。
 声をかけていいものかと迷ったものの、そのまま通り過ぎようとしたそのとき——。

「琴乃さん」
 
 呼びかけられたことに驚いて、私はピタリと足を止めた。
 振り返ると、お義母様が縁側に座ったまま私へ視線を送っている。

「はい」
「ちょっと、ここに座りなさい」

 有無を言わせぬ口調から、どんな小言が飛んでくるのだろうと思い、背筋に冷たいものが走る。
 私はとまどいつつも、促されるままに少し離れた場所へ横並びで腰を下ろした。
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