死病の花嫁は薬商伯爵に溺愛される~大正政略結婚、不遇令嬢の幸福論~
 胸がキュッと痛くなるほど、感動で心が震えた。
 私たちのあいだに積もっていた冷たい雪が、一気に溶け始めたような気がする。

「ねぇ、少しだけ私の昔話を聞いてくれる?」

「はい」と返事をしてうなずくと、苦笑いをしたお義母様が語り始めた。
 どんな話なのかと、私は静かに耳を傾ける。

「私が七つのころだったわ。祖父が……労咳で亡くなったの」
「え……労咳……」
「そう。あなたの家族の命を奪った、あの恐ろしい病」

 私は思わず目を見開いた。その事実は今までまったく聞いたことがなかったから。
 もしかして、外部の人間にはずっと隠してきたのだろうか。

「四十年前のあのころ、労咳は"家の恥"だとされていて、今よりもずっと忌み嫌われていたわ」

 私は話を聞きながら、共感を示すようにしっかりとうなずいた。
 私も桐ケ谷の家族全員を亡くしたときは、近所の人たちから相当白い目で見られた。
 悲しみのどん底にいる中でも、優しい言葉をかけてはもらえなかったから、お義母様の言うことはよくわかる。

「祖父はね、誰よりも優しい人だった」

 お義母様は視線を空へ向け、当時を懐かしんでいるような顔をした。

「厳しかった父と違って、祖父は私を叱ったことが一度もなかったのよ。異国の話を聞かせてくれたり、お土産に金平糖を買ってきてくれたり……。孫の中でも、私を一番かわいがってくれてね」
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