死病の花嫁は薬商伯爵に溺愛される~大正政略結婚、不遇令嬢の幸福論~
 目の前にいる気高いお義母様の中に、笑顔でお祖父様を見つめる小さな女の子の姿が重なった気がした。

「だからこそ、弱った姿を見るのがたまらなく苦しかった」

 七つといえば、今の冬馬くんと同じ年齢だ。
 年端も行かぬ子どもなら、労咳が不治の病だと理解できていなかっただろう。
 おそらく、大好きだったお祖父様と急に引き離されたのだと思う。

「祖父が床に臥せってから、家の者は誰も部屋へ近づこうとしなかった。食事を運ぶ女中でさえ、障子の外から声をかけるだけで中には入らない。……だけど私は、こっそりと隙間から覗いていたの」

 お義母様の指先が、湯呑みの縁をなぞるように動いた。
 遠い記憶を辿るように語ったその声は穏やかだけれど、わずかに震えている。

「血を吐く祖父の姿を何度も見たわ。でも、誰も助けようとしない。そばに寄ろうともしない。看病しても助けられないとわかっていたから」

 まだ七つだった幼いお義母様が、大好きなお祖父様が労咳で苦しむ姿を目の当たりに……。そう思うとつらさが伝わってきて、まだ話の途中なのに、いたたまれなくなった。

「怖かった。痩せ細っていく祖父がかわいそうで、心配で……。それなのに、病が移ってはいけないからと部屋に入らせてもらえなかった」
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