死病の花嫁は薬商伯爵に溺愛される~大正政略結婚、不遇令嬢の幸福論~
「お義母様も長年、その怖さを抱えていらしたんですね。私と同じように」

 私がそう言うと、お義母様はくしゃりと顔を歪め、堰を切ったように涙を流した。
 これまでの厳しい表情からは想像もつかないほどの、弱々しい泣き顔だった。

「……本当にごめんなさい。あなたにひどい仕打ちばかりしてきたわ」

 頭を下げるお義母様を見て、すぐに首を横に振った。

「話しにくいことなのに、こうして聞かせてくださって、私はとても嬉しいです」
「琴乃さん……」
「それに、桐ケ谷の娘だと知りながら、私をお屋敷に住まわせてくれましたよね。申し訳ないと思いながらも、心の中でずっと感謝していました。旦那様、お義母様、お義姉様や千草さんに」

 私がそう言うと、お義母様は何度も小さくうなずきながら、私の手を握り返してくれた。

「篤志が妻にしたいと言うのも無理ないわね。琴乃さんは本当にしっかりしていて、優しい人だもの」

 庭に吹く風が、ふたりのあいだをそっと通り抜けていく。
 これまでどこか張り詰めていた屋敷の空気が、がらりと和らいだような気がした。

 その日の夜。
 夕食のあと、私は自室で篤志さんに昼間の出来事を話していた。

「母がそんなことを……」

 篤志さんは神妙な顔をして、しばらく黙り込んでいた。
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