死病の花嫁は薬商伯爵に溺愛される~大正政略結婚、不遇令嬢の幸福論~
 お義母様が私のために自らお茶を淹れようとするなんて……これまでなら絶対にありえない。
 あの縁側での告白の日から、彼女の私を見る目はガラリと変わった。千草さんと同じく、顔を合わせるたびに優しい眼差しを向けてくれるようになったのだ。

「あ、いえ、お茶なら私が」
「いいのよ。昨日、高級な茶葉が手に入ってね。たまにはこういうことをしてみたい気分なの」

 やわらかく微笑むお義母様の表情は、最近とても軽やかだ。
 あの日、お祖父様の悲しい思い出を、震える声で語ってくれたときの姿が脳裏に浮かんだ。
 長年ひとりで抱え続けてきた労咳への恐怖を私に話すことで、心が少し軽くなったのだろうか。
 そう思うと、人の役に立てた気がして、胸の中が温かくなった。

「では……すみません、今日はお言葉に甘えます」
「ふふ。そういう素直なところ、篤志は最初から気に入っていたんでしょうね」

 からかうようにそう言われ、私は恥ずかしくなってうつむいた。
 お義母様は満足そうに微笑みながら、急須と湯呑みに手を伸ばしている。

 しばらくすると、玄関のほうから賑やかな声が聞こえてきた。
 パタパタという小さな足音とともに、「お祖母様!」という元気いっぱいの声が居間に響く。

「あ! おば様、おはようございます!」

 駆け込んできたのは、すっかり元気を取り戻した冬馬くんだった。

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