死病の花嫁は薬商伯爵に溺愛される~大正政略結婚、不遇令嬢の幸福論~
「おはようございます」

 そのあとを追うように、「冬馬、走らないで」と言いながら鈴子さんも姿を見せる。

「琴乃さん、おはよう」
「お義姉様、おはようございます」
「今日は、みんなで果物をいただこうと思って。これを見て?」

 鈴子さんはそう言いながら、大きな籠いっぱいの桃を差し出してくれた。

「わあ、こんなに立派な桃をたくさん……ありがとうございます」
「琴乃さんのおかげで冬馬が元気になったんだもの。これくらい当然だわ。井原の両親も琴乃さんに感謝しているの」

 鈴子さんは明るい口調でそう言ってにこりと笑った。
 冬馬くんは小学校に行かなければいけないはず……そう思ったけれど、よく考えたら今週から夏休みだ。

「あのね、おば様……」

 鈴子さんの隣で、冬馬くんがもじもじと後ろ手に何かを隠しながら、私の前に進み出た。

「僕、元気になったから……お礼にこれあげる!」

 照れくさそうに差し出されたのは、赤い折り紙で作った鶴だった。
 ところどころ不格好だけれど、小さな子が一生懸命折ったとわかる。

「昨日、母上と一緒に折ったんだ」
「私がもらってもいいの?」

 笑みをたたえてうなずく冬馬くんを見て、鶴を受け取った私は思わず目頭が熱くなった。
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