死病の花嫁は薬商伯爵に溺愛される~大正政略結婚、不遇令嬢の幸福論~
「そのころから俺は、琴乃に惹かれていたんだと思う。だが、まだ結婚の申し込みをするには早すぎるとか、自分の中でいろいろな理由をつけて言い出せずにいた」
私はドキドキする胸を押さえながら、彼の話を聞いていた。
当時の私は彼のそんな想いにまったく気づかないまま、ただ日々を過ごしていたのだ。
「不幸にも家族全員が亡くなり、琴乃が窮地に立たされていると知ったとき……正直に言えば、今だと思った。桐ケ谷先生への恩返しというタテマエで、ずっと気になっていた君を堂々と迎えることができるから」
彼は一度言葉を切り、私の真正面に立った。
彼の瞳の奥にはうしろめたさと、正直な気持ちを伝えようとする意志が交ざり、揺れているのが見える。
「母の心の傷や、暗い空気の漂う家のことが、まったく頭になかったわけじゃない。それに……」
彼は私のほうへ、一歩距離を詰めた。
「本当は、お父上から頼まれたからでも、同情したからでもない。俺は最初から、ひとりの女性として琴乃に好意を寄せていた」
彼の言葉が、真っすぐに私の胸を突き抜けた。
急激に鼻の奥がツンとして、涙で視界がぼやけていく。
「旦那様……」
「今さら格好の悪い話だとわかっている。それでも、ちゃんと伝えておきたかった」
篤志さんは少し困ったような顔をしたあと、優しい眼差しで私をしっかりと見つめた。
私はドキドキする胸を押さえながら、彼の話を聞いていた。
当時の私は彼のそんな想いにまったく気づかないまま、ただ日々を過ごしていたのだ。
「不幸にも家族全員が亡くなり、琴乃が窮地に立たされていると知ったとき……正直に言えば、今だと思った。桐ケ谷先生への恩返しというタテマエで、ずっと気になっていた君を堂々と迎えることができるから」
彼は一度言葉を切り、私の真正面に立った。
彼の瞳の奥にはうしろめたさと、正直な気持ちを伝えようとする意志が交ざり、揺れているのが見える。
「母の心の傷や、暗い空気の漂う家のことが、まったく頭になかったわけじゃない。それに……」
彼は私のほうへ、一歩距離を詰めた。
「本当は、お父上から頼まれたからでも、同情したからでもない。俺は最初から、ひとりの女性として琴乃に好意を寄せていた」
彼の言葉が、真っすぐに私の胸を突き抜けた。
急激に鼻の奥がツンとして、涙で視界がぼやけていく。
「旦那様……」
「今さら格好の悪い話だとわかっている。それでも、ちゃんと伝えておきたかった」
篤志さんは少し困ったような顔をしたあと、優しい眼差しで私をしっかりと見つめた。