死病の花嫁は薬商伯爵に溺愛される~大正政略結婚、不遇令嬢の幸福論~
「旦那様のことを、お慕いしております」

 言い終えた瞬間、パッと花が咲いたみたいに篤志さんが笑顔になった。
 まるで長年の願いが叶ったかのように嬉しそう。

「俺のほうこそ、ずっと言いたかった。愛している」

 篤志さんの顔がゆっくりと近づいてくる。
 百合の甘い香りに包まれながら、私は自然と目を閉じた。
 心臓がドキドキと早鐘のように鳴り響く中、彼の吐息が頬にかかり、その距離の近さだけで全身が熱を帯びていくようだった。

 温かくてやわらかな感触が唇に重なる。
 それは、性急でも荒々しくもない、まるで壊れ物に触れるような優しい口づけだった。

 火が付いたように彼の唇が熱いと感じるのは、夏の暑さのせいだけじゃないと思う。
 嬉しくて、身体がとろけそうになって、立っているのがやっとだった。
 感動で胸がいっぱいで、涙が堰を切ったようにあふれて止まらなくなる。

 ほんの数秒の口づけのあと、篤志さんはゆっくりと唇を離した。
 至近距離で見つめ合ったまま、どちらからともなく小さく笑みがこぼれる。

「……琴乃の唇は、思っていたよりずっとやわらかいな」
「もう、旦那様……」

 あまりに率直な感想を伝えられ、私はおろおろとしながらうつむいてしまう。
 篤志さんはそんな私を見てアハハと笑うと、身体をそっと抱き寄せた。
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