死病の花嫁は薬商伯爵に溺愛される~大正政略結婚、不遇令嬢の幸福論~
「こ、これは……家庭醫學新書と言って、看病の指南が書いてあるもので、家族が病気になったときに役立つ本です」
焼け焦げてボロボロになった父の本を両手で持ち、お義母様のほうへ向けて震える声でそう言った。
燃やされていい本なんかじゃない。そこから労咳が移ることもない。
医者だった父が、家庭内でも学べるようにと購入してくれたものだ。私にとってはかけがえのない思い出のひとつ。
そう訴えてみたものの、お義母様はそれがどうかしたのかと、冷めた視線を向けるだけだった。
「千草、父上に買ってもらった着物があっただろう。今すぐ持ってこい」
私の隣に立つ篤志さんが、千草さんを見ながら低く不気味な声音でそう告げた。
「俺が燃やしてやる」
「え⁈ 何言ってるの? 私が一番大事にしている着物よ!」
「お前がしたのは、それと同じことなんだ! わかるか?」
彼の声が響き渡り、中庭の空気がさらにピリついた。
ここまで言われるとは夢にも思っていなかった千草さんは、恐怖のあまり完全にすくみ上がってしまう。
怯えたように何度も瞬きをすると、大きな瞳から大粒の涙が堰を切ったようにポロポロと溢れて頬を伝った。
先ほどまでの反抗的な態度は消え、子供のようにしゃくり上げながら、助けを求めるようにお義母様の袖に縋りついている。
焼け焦げてボロボロになった父の本を両手で持ち、お義母様のほうへ向けて震える声でそう言った。
燃やされていい本なんかじゃない。そこから労咳が移ることもない。
医者だった父が、家庭内でも学べるようにと購入してくれたものだ。私にとってはかけがえのない思い出のひとつ。
そう訴えてみたものの、お義母様はそれがどうかしたのかと、冷めた視線を向けるだけだった。
「千草、父上に買ってもらった着物があっただろう。今すぐ持ってこい」
私の隣に立つ篤志さんが、千草さんを見ながら低く不気味な声音でそう告げた。
「俺が燃やしてやる」
「え⁈ 何言ってるの? 私が一番大事にしている着物よ!」
「お前がしたのは、それと同じことなんだ! わかるか?」
彼の声が響き渡り、中庭の空気がさらにピリついた。
ここまで言われるとは夢にも思っていなかった千草さんは、恐怖のあまり完全にすくみ上がってしまう。
怯えたように何度も瞬きをすると、大きな瞳から大粒の涙が堰を切ったようにポロポロと溢れて頬を伝った。
先ほどまでの反抗的な態度は消え、子供のようにしゃくり上げながら、助けを求めるようにお義母様の袖に縋りついている。