死病の花嫁は薬商伯爵に溺愛される~大正政略結婚、不遇令嬢の幸福論~
 彼女はどう対処していいかわからず、私に助けを求めにきたのだ。
 私だって、何が起こっているかわからない。でも、天澤家の一員として、放っておくことは絶対にできない。

「どういう状況なの?」
「みなさん、急に吐き下されて……今はぐったりされています」

 女中は唇を震わせ、何をすればいいのかわからず泣きそうな顔をしている。

「三人とも……」

 胸の動悸が激しくなった。命に係わる病気だったらどうしよう。

「若奥様、どうしたらいいでしょう。こんなことは初めてで、みんな動揺してしまって……」

 まずい。一刻も早く対処しなければ……。
 落ち着こう。私まで気が動転していたら、女中たちに的確に指示できない。
 フーッと息を吐いたあと冷静に頭を働かせ、自分の部屋の隅に置いてあった霧吹きを手に取った。

「わかったわ。私が処置をします。ところであなた、吐いたものを片づけようとして触った?」
「いえ、私は触っていません」
「そう。でも一応両手を出して?」
 
 霧吹きの中に入っているのは消毒液を薄めたもの。それを彼女の手に振りかける。

「お義母様の部屋が一番近くて広いわね。そこに三人分の布団を敷くよう、他の人にも伝えてくれる? それと、お医者様に連絡して来てもらうよう頼んでちょうだい」
「わかりました」
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