死病の花嫁は薬商伯爵に溺愛される~大正政略結婚、不遇令嬢の幸福論~
「いいんです。それより、口をゆすぎますか? 気持ち悪いでしょう?」
千草さんに水の入ったグラスを手渡し、吐き出したものを片づける。
そのあと女中たちの仕事ぶりを確認するため、台所へ足を向けた。
「若奥様、会社にいらっしゃる旦那様にもお伝えしたほうがいいでしょうか」
年配の女中が悲愴な面持ちで声を震わせながら尋ねてきた。
篤志さんは仕事で忙しい身だけれど、三人も倒れて大騒ぎになっているこの現状を、遠慮して伝えないのも変だろう。
「……そうね。誰か知らせてくれるかしら? あと、消毒液も足りないわ。会社にはたくさんあるはずだから、届けてもらいましょう」
「わかりました」
「それと、お義姉様のご自宅にも連絡を。今日はこちらに泊まってもらいます」
鈴子さんの嫁ぎ先である井原家も、彼女の帰りが遅ければ心配するはずだ。
それに、この状態では帰せない。冬馬くんという七歳のお子さんがいるなら、なおさらだ。
思案していると、別の女中が玄関のほうから小走りでやってきた。
「若奥様、お医者様が来られました」
「すぐに診てもらいましょう」
往診鞄を抱えた白髪交じりの医師は、すぐに部屋へ入り、ぐったりと横たわる三人へ手際よく聴診器を当てて脈を取っていた。その真剣な横顔を、私は祈るような心地で見守る。
やがて、喉や瞳の様子を確認し終えたお医者様は、安堵の息を漏らしつつこちらを振り返った。
千草さんに水の入ったグラスを手渡し、吐き出したものを片づける。
そのあと女中たちの仕事ぶりを確認するため、台所へ足を向けた。
「若奥様、会社にいらっしゃる旦那様にもお伝えしたほうがいいでしょうか」
年配の女中が悲愴な面持ちで声を震わせながら尋ねてきた。
篤志さんは仕事で忙しい身だけれど、三人も倒れて大騒ぎになっているこの現状を、遠慮して伝えないのも変だろう。
「……そうね。誰か知らせてくれるかしら? あと、消毒液も足りないわ。会社にはたくさんあるはずだから、届けてもらいましょう」
「わかりました」
「それと、お義姉様のご自宅にも連絡を。今日はこちらに泊まってもらいます」
鈴子さんの嫁ぎ先である井原家も、彼女の帰りが遅ければ心配するはずだ。
それに、この状態では帰せない。冬馬くんという七歳のお子さんがいるなら、なおさらだ。
思案していると、別の女中が玄関のほうから小走りでやってきた。
「若奥様、お医者様が来られました」
「すぐに診てもらいましょう」
往診鞄を抱えた白髪交じりの医師は、すぐに部屋へ入り、ぐったりと横たわる三人へ手際よく聴診器を当てて脈を取っていた。その真剣な横顔を、私は祈るような心地で見守る。
やがて、喉や瞳の様子を確認し終えたお医者様は、安堵の息を漏らしつつこちらを振り返った。