死病の花嫁は薬商伯爵に溺愛される~大正政略結婚、不遇令嬢の幸福論~
「萬代薬品は、ここ数年で急速に成長してきた会社だ。強引に物事を進めるやり方は、昔から有名だったがな」
「まさか、私の噂を……」
「ああ。死病を出した家の娘を嫁に迎えた天澤家は縁起が悪い、次にまた何が起きるかわからない、そんな家と今後も懇意にしていていいものか……そんなふうに嵯峨野家へ吹き込んでいるようだ」
顔から一気に血の気が引いていくのが、自分でもわかった。
桐ケ谷の娘である私が嫁いできたことで、天澤製薬の商売にまで影響を及ぼすなんて、考えたこともなかった。
父の死後、篤志さんと結婚して、新しい自分の居場所を得られたと思っていた。
だけどその居場所を、大切な天澤の家を、私自身が脅かしているのかもしれないのだ。
そんな恐ろしい考えが頭をよぎると同時に、唇がわなわなと震えた。
「旦那様……申し訳ございません。私がこの家に来たばかりに、みなさんにご迷惑を……」
「謝る必要はない」
篤志さんは私の手を取り、しっかりしろと言わんばかりに強く握った。
「琴乃は何も悪いことをしていない。悪いのは、他人の不幸を金儲けのために吹聴する、あの連中のほうだ」
彼の言葉はありがたかったけれど、胸の奥に刺さった棘は、簡単には抜けそうになかった。
私という存在が、天澤家そのものを揺るがしかねない。そんなふうに考えてしまい、いたたまれない気持ちになる。
「まさか、私の噂を……」
「ああ。死病を出した家の娘を嫁に迎えた天澤家は縁起が悪い、次にまた何が起きるかわからない、そんな家と今後も懇意にしていていいものか……そんなふうに嵯峨野家へ吹き込んでいるようだ」
顔から一気に血の気が引いていくのが、自分でもわかった。
桐ケ谷の娘である私が嫁いできたことで、天澤製薬の商売にまで影響を及ぼすなんて、考えたこともなかった。
父の死後、篤志さんと結婚して、新しい自分の居場所を得られたと思っていた。
だけどその居場所を、大切な天澤の家を、私自身が脅かしているのかもしれないのだ。
そんな恐ろしい考えが頭をよぎると同時に、唇がわなわなと震えた。
「旦那様……申し訳ございません。私がこの家に来たばかりに、みなさんにご迷惑を……」
「謝る必要はない」
篤志さんは私の手を取り、しっかりしろと言わんばかりに強く握った。
「琴乃は何も悪いことをしていない。悪いのは、他人の不幸を金儲けのために吹聴する、あの連中のほうだ」
彼の言葉はありがたかったけれど、胸の奥に刺さった棘は、簡単には抜けそうになかった。
私という存在が、天澤家そのものを揺るがしかねない。そんなふうに考えてしまい、いたたまれない気持ちになる。