死病の花嫁は薬商伯爵に溺愛される~大正政略結婚、不遇令嬢の幸福論~
「顔が硬いぞ」
隣に座る篤志さんがもう一度声をかけてくれた。
「嵯峨野伯爵は、噂に惑わされるような方じゃない。それは、これまでの付き合いでよくわかっている」
「はい……」
私はコクリとうなずいた。だけど頭ではわかっていても、心はなかなか追いついてくれない。
車窓を流れる景色を眺めながら、私はそっと目を伏せた。
やがて車は見覚えのある石造りの正門をくぐり、嵯峨野邸の前に到着した。
「先日は我が家のことでお騒がせし、ご心配をおかけして申し訳ございませんでした。食あたりはありましたが、大事には至らず、みな元気に過ごしております」
応接間に通された私たちは、嵯峨野伯爵夫妻を前に、深く頭を下げた。
「なんだ、そんなことで律儀に足を運んでくれたのか」
嵯峨野伯爵は快活に笑い、私たちを気遣うように手土産を受け取ってくれた。
「噂というのは、いつだって尾ひれがつくものだ。天澤くんのところが大変な目に遭ったという話は聞いていたが、こうして元気な顔を見られて安心したよ」
「本当に。それに、琴乃さんが的確に対処してくださったから、大事に至らなかったのでしょう?」
伯爵夫人が私に優しい眼差しを向けてくれたのが嬉しくて、小さく笑みをたたえた。
隣に座る篤志さんがもう一度声をかけてくれた。
「嵯峨野伯爵は、噂に惑わされるような方じゃない。それは、これまでの付き合いでよくわかっている」
「はい……」
私はコクリとうなずいた。だけど頭ではわかっていても、心はなかなか追いついてくれない。
車窓を流れる景色を眺めながら、私はそっと目を伏せた。
やがて車は見覚えのある石造りの正門をくぐり、嵯峨野邸の前に到着した。
「先日は我が家のことでお騒がせし、ご心配をおかけして申し訳ございませんでした。食あたりはありましたが、大事には至らず、みな元気に過ごしております」
応接間に通された私たちは、嵯峨野伯爵夫妻を前に、深く頭を下げた。
「なんだ、そんなことで律儀に足を運んでくれたのか」
嵯峨野伯爵は快活に笑い、私たちを気遣うように手土産を受け取ってくれた。
「噂というのは、いつだって尾ひれがつくものだ。天澤くんのところが大変な目に遭ったという話は聞いていたが、こうして元気な顔を見られて安心したよ」
「本当に。それに、琴乃さんが的確に対処してくださったから、大事に至らなかったのでしょう?」
伯爵夫人が私に優しい眼差しを向けてくれたのが嬉しくて、小さく笑みをたたえた。