軍医と傷読みの花嫁 ~閉じこもり薬師は、傷もちの旦那様に愛される〜
23話 全てを捨てて、君の元へ



 出勤しようと外に出ると、門のすぐ横で薫子が待っていた。
 薫子は将臣の姿を見るや否や、しなやかにそばへ駆け寄ってくる。三日月の目は、どこか嬉しさを懸命に抑え込んでいるようだった。
「凪さん、いなくなったそうですね。父上から伺いましたわ」
 将臣の眉がぴくりと跳ねる。
(この目は……昔から好きになれん)
「……はい。なぜ、それを?」
 ぱぁっと薫子の顔が華やぐ。
「あらやだ。私たちの両親は、つながっていますのよ。私と将臣様の婚約を心から望んでいたではないですか。そこに凪さんが現れて、立ち消えになってしまって」
 口早にそう言うと、薫子は白魚のような手を、自らの胸元にそっと当てた。
「私なら……将臣様が軍医総監になられるその日まで、完璧にお支えできますわ」
 自信に満ち溢れた薫子の言動に、将臣の眉間がぎゅっと深く寄る。
「……あなたは、『軍医総監の妻』になりたいのですか?」
「千条家の繁栄のために、私はそのための教育を受けてまいりました」
 薫子は将臣の冷ややかな視線に気づく様子もなく、ここぞとばかりに微笑みを深める。
 将臣は心底呆れたように、小さく息を漏らした。
「ならば……あなたのお父上に直接、『軍医』との縁談を申し入れてください」
「まぁ! もちろんですわ!」
 薫子の目が、歓喜で大きく見開かれる。
 ──自分が選ばれたのだと、疑いもなく思い込んで。








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