軍医と傷読みの花嫁 ~閉じこもり薬師は、傷もちの旦那様に愛される〜



「凪」
「あっ……!」

 はっと我に返ると、凪の瞳からはボロボロと溢れ出た涙が止まらなくなっていた。悟られまいと振り返ることもできず、慌てて袖で涙を拭う。
「……な、なんでしょう」
「湿布は少し多めに持っていこう。きっとまた必要になるだろう」
「ええ。わかりました。準備いたしますね」
 将臣は、部屋へと戻っていた。
 その気配を感じながら、凪はそっと振り返る。

 もう二度と見捨てたくない──

 疲れた身体でも、人のために動く理由。
(これが、将臣様の原点だったのね……)
 胸の奥が、ぎゅっと締めつけられる。

「みゃん」
 結丸が短く鳴いた。
 凪はその身体を包むように抱き寄せる。
「だから結丸も、助けてもらえたのね」

 どれほど疲れていても、人のために動く。
 休日さえ、誰かを救うために使う。
 そんな人だから。

 凪は込み上げる想いを胸の奥へそっとしまい込んだ。

(あの人は、誰も見捨てない)
(それなら私も、あの人を精一杯お支えしたい)

 腕の中で温かな体温を伝える結丸を抱きながら、凪は静かに決意を固めた。







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