軍医と傷読みの花嫁 ~閉じこもり薬師は、傷もちの旦那様に愛される〜




 翌日。
 往診先に近づくと、家の前で立ち尽くす女性がいた。将臣を見つけた途端、走り寄ってきた。
「先生、早くきてっ! 旦那が怪我をして、血が止まらないの!」
 
 将臣と凪は、急いで患者の元へと向かった。
 家へ駆け込むと、居間には三十代ほどの大工が横たわっていた。
 右腕を手拭いで押さえているが、手の隙間から、血が畳へ滴り落ちている。
「先生……やっちまった」
 男性の額には脂汗が流れている。
 妻らしき女性が泣きそうな声を上げた。
「作業中に古い板を剥がしたら……飛び出した釘で腕を裂いてしまって!」
 将臣は一瞬で傷口へ視線を走らせる。
「凪、清潔な布を取ってくれっ」
「はい!」
 凪は風呂敷から晒を取り出して手渡す。
 将臣はそれで傷口を強く圧迫した。
「少し痛みます。我慢して」
 傷口からなおも血が滲む。
 将臣は冷静だった。傷の深さを確かめると水で洗い流し、ヨードチンキで消毒をした。
「っ……!」
 男が歯を食いしばり、身体を震わせた。
 凪は思わず息を飲む。
(こんなに深い傷、初めて見たわ……)
 将臣は迷いなく針と糸を取り出した。
「縫合しますから、痛みます。無理はなさらず、声を出してください」
「へっ。これくらいなんてことないわっ」
 男性は、苦しそうに強がった。
「では、始めます」






 






 


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