軍医と傷読みの花嫁 ~閉じこもり薬師は、傷もちの旦那様に愛される〜



 甘辛い醤油の焦げる芳しい香りが鼻腔をくすぐる。
「お腹が空きましたね」
「……焼き団子でも食べるか」
「食べたいです!」
 迷いのない凪の返事に、将臣はまた肩を揺らして吹き出した。

「甘じょっぱくて、もちもちしていて……すごく美味しいです!」
「これも、初めて食べるのか?」
「お団子は食べたことがありますが、焼いてあるものは初めてです」
 無邪気に笑う凪の口元に、ちょこんとタレがついていた。
 将臣は無意識に手を伸ばしかけ、途中ではっと宙で止める。
「凪、口についているぞ」
「えっ? どこですか?」
 きょとんと首を傾げる凪に、将臣は何気ない顔を装って袖から手拭いを取り出した。
「動くな」
 そう短く言うと、凪の柔らかい口元をそっと拭った。
「あ……口についていたんですね。ありがとうございます……」
 自分の間抜けさに、凪は顔を真っ赤にして俯く。
 将臣もまた耳を朱に染め、ゴホンと咳払いを一つして頷いた。
 その後も二人は屋台の飴細工を眺めたり、紙風船を買ったりと、時間を忘れて楽しんだ。

「わっしょい! わっしょい!」
 威勢の良い掛け声とともに、神輿を担いだ男衆が近づいてくる。太鼓と笛の音が重なり、祭りの熱気は最高潮に達していた。
「将臣様、お神輿が来ますよ! すごく立派なお神輿です!」
 凪は釘付けになり、見物客の波がわっと道の端へ押し寄せる。
「人が増えてきたな。そばから離れるなよ」
「はい!」




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