軍医と傷読みの花嫁 ~閉じこもり薬師は、傷もちの旦那様に愛される〜
 


 夕暮れ時になると、境内の提灯にぽつぽつと橙色の火が灯り始めた。
「あ、雨が降ってきたー!」
 子どもが買ったお面を頭にかざして走り去る。
 凪がそっと手のひらをかざすと、冷たい雫がぽつりと落ちてきた。
「降ってきましたね」
 あっという間に雨粒は大きくなり、激しい音を立て始める。
「あの社の軒下で雨宿りをしよう」
 急いで社の軒下へ駆け込み、二人は肩を並べた。
「あまり濡れずに済みましたね。でも、止みますでしょうか」
「夕立だろう。しばらくすれば、すぐに止む」

 凪は手に入れたキャラメルや、買ってもらった紙風船を嬉しそうに並べて眺めている。
 静まり返った境内に響く雨の音が、将臣の耳には妙にうるさく聞こえた。何を話せばいいのか分からず、手持ち無沙汰に拳を握り直す。
 無邪気な凪の横顔を見つめていると、先日、血を見て倒れかけた彼女の姿が脳裏をよぎった。
(あの現場は……慣れていない凪には衝撃が強すぎた……)
「凪」
「はい?」
 凪が振り返る。
「……先日のような現場は、もう見なくていい。慣れていないお前が、無理についてくる必要はないからな」
 将臣の言葉の意図を汲み取り、凪の表情がすっと引き締まった。






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