軍医と傷読みの花嫁 ~閉じこもり薬師は、傷もちの旦那様に愛される〜
二人の後ろ姿を離れた物陰から見ていた晴臣は、踵を返した。
仲睦まじく歩く二人の姿が頭から離れず、眉間に皺が寄る。
袖から凪からもらった結菓子を取り出すと、苛立ちのまま道端へ放り投げた。だが、数歩歩いたところで、足が止まる。すぐに引き返し、結菓子を拾って再び袖へしまった。
「……た、食べ物は粗末にはできんからなっ」
誰もいない道端で、小さく言い訳を吐いた。
屋敷へ戻ると、玄関先で花を活けていた母が着崩れた晴臣の着物をみて眉を寄せた。
「晴臣ったら。身だしなみはきちんとしなさいって言ってるでしょう」
「はーい」
生返事で聞き流し、廊下を歩いていく。すると、曲がり角で父とすれ違った。
父は晴臣の格好を一瞥し、不快そうに眉をひそめただけで、何も言わずに通り過ぎた。
その背中を見送りながら、晴臣は立ち尽くした。
(どうせ俺なんて……叱る価値すらないんだ)
その顔は、激しい悲しみと暗い怒りに歪んでいた。