軍医と傷読みの花嫁 ~閉じこもり薬師は、傷もちの旦那様に愛される〜
「もう泣かないで」
「うっ……うっ……兄上があんなに苦しんでいたなんて、俺、全然知らないでっ。嫌な態度ばかりっ……」
「将臣さんは、表に出す方ではないから、気が付かないのは仕方ないわ。ほら、拭いて」
そっと手拭いを渡すと、勢いよく鼻をかんだ。
凪はそっと優しく微笑んだ。
「将臣様はすぐに家に戻れると二ノ宮先生がおっしゃっていたわ。だから、私たちも笑顔で迎えられるように、気持ちを入れ替えよう」
「わかってらあっ!!」
凪は呆れるように、小さく息を吐く。
「はい、これどうぞ」
凪の手には、結菓子があった。
晴臣は照れくさそうに、けれど泣きそうになる。
「また、それかよっ」
「そうよ。こういう時こそ、甘い結菓子を食べましょう」
「……もらっといてやるっ」
さっと手のひらから菓子を受け取った。
「将臣様の傷……早く癒えるといいわね……」
(心の闇を見てしまった。彼は、あまりにも重い責苦を負いすぎている)
凪は、夕闇の空を見上げた。
(彼の闇を払ってあげたい。
私は……あの人を、救ってあげたい)
雲の垣間から見える橙の空から、凪は目を離すことができなかった。