軍医と傷読みの花嫁 ~閉じこもり薬師は、傷もちの旦那様に愛される〜



「みゃん」
 いつの間にかやってきた結丸が将臣の腕に身体を擦り付けた。二人は自然と手を離した。
「結丸。留守番をありがとうな」
 そう言って抱き上げ、首を撫でる。数日間の主人の不在を取り戻すように、手でもっと撫でるように要求してきた。
「ふふっ、結丸も会いたかったんですね」
「もう、どこにも行かない。安心しろ」
 結丸はちらりと凪を見た。そして、甘えるような声で小さく鳴いた。
 将臣の言葉は結丸に向けられたようでありながら、凪への約束にも聞こえた。


 将臣の両親が様子を見にやってきた。
「気持ちよさそうに寝ているわね……」
 母は今にも泣き出しそうな顔でそう言った。
 憲一は、眉間に皺を寄せたまま無言だった。
 小さな寝息を立てて眠っている将臣を起こさぬよう、廊下からその姿を確認すると、母は静かに襖を閉めた。
「凪さん、将臣のことをこんなに丁寧に……本当にありがとう」
 将臣の母は涙声を震わせて、凪の手を握った。
 しかし、憲一は口を一文字にして表情が固い。
「町の患者など相手にするからだ。これはあいつの慢心だ」
 凪に鋭い視線を送る。
「将臣は昇進する身なのだから、大事に世話をしなさい」
(ああ……将臣様の昇進は、皆から望まれていることなのだな)
「……お前は、女中としてなら合格なのにな」
憲一の小さなため息が、凪の心を重くする。
その言葉に、凪は何も返すことができなかった。








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