軍医と傷読みの花嫁 ~閉じこもり薬師は、傷もちの旦那様に愛される〜



「……少し待ちなさい」
 源一郎が奥から持って戻ってきたのは、あの翠が凪に触らせた古びた写真帖だった。
 凪の身体が硬直する。
 源一郎がページをめくると、若い頃の美しい母親の姿が現れた。源一郎は、愛おしそうにその写真を指でなぞる。
「ひろ子は病弱だった。だが、どうしても二人目の子が欲しいと譲らなかったんだ。わしがもっと強く止めていれば……こんなことにはならなかった」
「……母上が、私を望んだ……?」
「そうだ。自分の命と引き換えにしてでもお前が欲しいと。だから凪が生まれた時、ひろ子とわしは心から喜んだ。神様に感謝したよ。しかし──」
 写真帖をめくっても、もう母親の写真の続きはなかった。
「わしは自分を責め続けてきた。子供たちから母親を奪ってしまったのは自分だと。……凪にどう接していいかもわからなくなり、本当にお前に寂しい思いをさせてしまった」
 源一郎はギュッと目を閉じ、項垂れた。そして、ゆっくりと凪を見つめ直した。

「凪。お前は心から望まれて、この家に来た子だ」





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