先生と、時々涙雲
卒業式
春風に吹かれながら
まだ咲いていない桜の木の下を
自転車で駆け抜ける
「今日で高校生活おわりだなんて、早いねぇ」
隣で自転車を漕ぐ唯の言葉に
わたしはまだ実感が湧かない
自転車を止めた私たちは
正門に並びはじめた
「はい、取るぞー!」
そこには黒いスーツを着た
わたしのだいすきな先生の姿
入学式の時も、先生はカメラマンだったっけ。
「あとで、ツーショット撮ってあげるからね♪」
「うんっ!!」
−−−パシャッ
「藤花笑って」
先生の一言でわたしと唯は顔を見合わせて微笑みながら、写真を撮ってもらった。
「先生、卒業式間に合うよね?」
「おう!当たり前だー!お前の担任なんだから」
お前の担任なんだからって
あと数時間後にはもう
わたし先生の生徒じゃなくなるんだよ。
カメラマンは先生の毎年の仕事なんだって。
3学年の担任の時くらい
誰かに任せればいいのに、なんて思った。
〜♪
卒業の歌を歌って
卒業証書を受け止って
私たちは教室に戻った
「藤花、俺の書いてくれよ!」
「うん、わたしのも書いて〜!」
卒業アルバムの最後のページの寄せ書きを開いて、差し出したのは瀬戸くん。
「そういえばさ……あのとき悪かったな」
「え?なにが?」
「いやその……すばるっちのこと。
俺応援してっから!頑張れよ!」
「…うん!ありがとう」
「じゃあな、藤花!元気でな!」
教室には私と唯の2人きりになった。
先生と話したかったから……
わざと、みんなが帰るのを待ってた。
「よし、すばるのとこいこっか♪」
何を話そうか考えながら向かう職員室も
これで最後なんだと思うと
なんだか寂しくなってきた。
「……誰もいないねぇ」
職員室には誰1人残っていない。
最後だからと勝手に入った職員室の、先生のデスクにあったメモ書きが目にとまる。
『資料室』
その文字をみて、わたしと唯は走り出した。