禁死篇 ~成人前に亡くなったけど、異世界で元気にがんばってます。
やってきた伯母上
「お茶を入れてちょうだい」
「ただいま、すぐに…」
シャーロッテの小姓たちはパッと散らばって、テキパキと動き始める。
邸内には豪華な家具と調度品がおかれて、ずっと前からそこに存在したかのように見える。しかし、実際はほんの数分前に魔石で作られた家なのだ。仕掛けはわからないが、大きな花瓶にきれいな花まで飾ってあった。
(…生花かな? それとも造花? ディズ…ーアニメに出てくる「お化け屋敷」みたいだ)
「わたくしの旅行用のおうちです。据付の家具もついていて、とても便利なんです!」
サイラスの心の声が聞こえたように、こちらに顔を向けてシャーロッテが説明する。
(キャンプ用のテントみたいなもの? ずいぶん豪華なテントだけど)
オリバーとサイラスはお茶とお菓子を勧められて、茶器を手に取った。ドイル家では馴染みのない銀食器に、見たことのないお菓子が盛られている。
何の果物か知らないが、アップルパイに似たパイ、おそらくベリー系のタルト、野菜と肉を挟んだサンドイッチのようなパン。
何の肉を使っているのかは不明。リアル謎肉だ。そして、クリームを添えられたスコーンっぽいお菓子もあった。
隣に座っているオリバーが、お茶をひとくち飲んで満足そうに溜息をつく。サイラスもオリバーに続いてお茶を飲んだ。
うん、とても良い茶葉を使っている。
シャーロッテへの好感度がグッと跳ね上がった。やはりおいしい茶葉は重要だ。英国人ほどではないが、前世で日本人のサイラスもお茶にはうるさい。
シャーロッテは興味深そうに、ユウキとサイラスを見比べていた。
「ユウキ、あなたとサイラスはずいぶん似ているのですね? 甥っ子というより、まるで双子みたいだわ…」
ユウキはフッと笑って、サイラスを見やる。
「…どうだサイラス、シャーロッテは面白い女性だろう?」
サイラスとユウキの外見はまったく似ていない。サイラスは中肉中背で、髪の色は水色、目の色はエメラルドグリーンだ。
対してユウキは、大柄で筋肉質。髪も目も黒く、日本人にしては肌はやや浅黒い。それを双子みたいだという彼女には、僕らがどう見えているのだろう?
「シャーロッテさまには、叔父上と僕が似ているように見えるのですか?」
「えぇ、とっても!」
サイラスはちょっと首をすくめる。…どう見ても似ていないと思うんだけど? ノラだって、僕と亡くなった母上がそっくりだと言っていた。母上と叔父上は血縁関係がないから、ノラの答えは「僕とユウキは似ていない」ということだよ。
「……わたくしは他の方とは少し物の見え方が違うかもしれません」
シャーロッテは小首を傾げると、薄い空色の瞳でじっとサイラスを見つめる。
「わたくしの家はもともと巫女の家系です。子供の頃から、ちょっと変わったものを見て生きてきましたの」
シャーロッテは赤い唇をニヤッとさせる。
「サイラスは霊力があるんです。シャーロッテさまが叔父上とサイラスが似ているように感じるのは、そのためじゃないかな?」
オリバーが半分はサイラスに答えるようにいう。オリバーとシオドアには霊力はないが、サイラスとユウキには霊力があるらしい。
この世界では子供の頃に簡易検査を受けて、霊力の有無を確認する。オリバーもサイラスも大きな水晶玉を触って、霊力の有無を検査してもらった。その時の検査は成人式を行ったアトス寺院で行ったのだ。
(僕の触った水晶玉がキラキラ光って、父上とオリバーがすごく喜んだんだ…)
忘れ去っていた過去の記憶が蘇ってくる。
ただし、本格的に霊力を伸ばすのは成人後になる。幼少期から霊力を伸ばそうとすると、身体の成長を阻害して健康を損なうといわれているためだ。
子供が霊力を伸ばしすぎると、霊力のコントロールが利かなくなって「体を喰われる」といわれている。見世物小屋で霊力を披露している人間の多くは体が不自由だったりする。霊力があるために見世物小屋に売られて、子供の頃から霊力を使わされたに違いない。
子供の霊力を伸ばしたいのはやまやまだが、身体を壊してしまっては本末転倒だし、無理に子供の頃から霊力を伸ばす行為は禁止行為になっている。教育虐待みたいな位置づけだ。
「オリバーのおっしゃる通りでしょうね。そもそも、すべての人が同じものを見るわけではありませんわ。クリスティ公爵家は少し変わっておりますし…。男子が生まれても、我が家では長女に婿をとって家を継がせるのです。巫女の能力は、残念ながら女児にしか引き継がれませんから、そういうしきたりなのです。……わたくしの父も婿養子ですわ」
シャーロッテは公爵家という高位貴族なのに、男子ではなく長女とその婿が家を継ぐのだという。女系継承の家であることにびっくりする。
ということは、ユウキは将来、公爵様になるのか? ものすごい出世ではないか!
「クリスティ家の婿になるには、霊力が必要なのです。誰でも良いというわけではありません。ですから、わたくしたちは自分で結婚相手を見つけなくてはなりませんの。…その、霊力は視える者にしか視えませんでしょう? 自分で探さざるを得ないのです」
「それでは、シャーロッテさまが叔父上との結婚をお決めになったんですか?」
オリバーが興味津々という感じで質問する。ユウキとの馴れ初めが知りたいらしい。サイラスもユウキの恋愛話には興味があるので、「オリバー、いいぞ!」と心の中で応援する。
「当時、わたくしは成人して間もない十六歳でした。そろそろ本格的に婿探しを始めなければならないと思っていた矢先に、ミニヨンの花祭りでユウキ様を見つけましたの。ユウキ様は霊力で光り輝いていて、わたくしは『この方こそ、わたくしの探し求めていた夫!』だと確信いたしました」
「花祭りで? おふたりの出会いは花祭りだったのですか? とてもロマンチックですね!」
オリバーが感動している。サイラスも「ほぅほぅ」と頷いている。ユウキは「いや……まだ出会ってはいないんだが…」と微妙に口ごもる。
「わたくしはさっそく、手の者にユウキ様の身辺を調べさせ、どなたか女人の影でも散らつこうものなら、金品を積んでも、暴力を行使しても構わないので早急に対処せよと申しつけまして……」
シャーロッテが頬を赤らめ、瞳をキラキラさせながら語る馴れ初めの物語は、かなり微妙なものだった。要約すると、ミニヨンの花祭りで偶然ユウキを見かけたシャーロッテが、霊力の高いユウキに惚れ込んでかなり強引に求婚したらしい。怪しいストーカーみたいな話を聞かされて、少し反応に困ってしまった。
(この人、すごい美女だけど、もしかしてちょっと変わってる?)
「……というわけで、全身全霊をかけてユウキ様を我がクリスティ家にお迎えしたわけです。わたくしの結婚申し込みを快くお受けくださったドイル男爵には、心より感謝しております」
うーーん、父上も驚いたろうな。
とはいえ、相手が公爵家では簡単にお断りもできないだろう。シャーロッテの話によると、隣国では男性祭司の血筋が王家であり、女性巫女の血筋がクリスティ公爵家になるらしい。
シャーロッテのクリスティ家は、かなりの名門なわけだ! これは間違いなく逆玉の輿だな。
王家とクリスティ家は長年に亘って、互いに嫁取りや婿入りを繰り返してきたのだが、やがて血が濃すぎることが問題になったそうだ。
「長年両家で婚姻を繰り返した結果、王家もクリスティ家も霊力が弱まり、体が弱い子供が生まれてくることがわかったのです。それで、王家と巫女の家の結婚は制限を受けることになりました」
結果として新しい血を求めて、他国で霊力の高い人間を探すようになったらしい。
「そういうわけですので、今回わたくしは花祭りに来るのをとても楽しみにしておりました。ミニヨンの花祭りはわたくしたちふたりの思い出の場所ですから!」
サイラスは「……なんか、聞かなきゃ良かった?」と思っていたが、オリバーはシャーロッテの話がそれなりに楽しかったらしい。
「叔父上が結婚なさった当時、叔父上が遠くに行ってしまうのが寂しくて不満だったのです。僕たち子供は式にも参加できずに、お別れだけが悲しかった思い出なのです」
オリバーはちょっと恥ずかしそうに告白する。顔が赤くなっている。
「子供だったのです。叔父上をお祝いする気持ちも持てないなんて、恥ずかしいことです……」
「まぁ……」
シャーロッテが同情するように目を瞬かせる。オリバーの正直さに心を動かされたのだろう。
「ですから、今回シャーロッテさまにこういうお話を聞かせていただけて、何だかうれしく思います」
「大好きな叔父様を隣国に取られてしまったと思われたかもしれませんが、そうではありません。オリバー、あなたは何も失っていません。むしろ、わたくしという新しい家族を得たのですよ」
シャーロッテは僕の方にも顔を向ける。薄い空色の瞳で僕をじっと見つめる。
「……サイラス、あなたは」
彼女の瞳がふっと翳る。僕を見つめる彼女の瞳に、魂が吸い込まれそうだ。
「どんなに遠くに離れていても、あなたは家族と別れてはいないのですよ。いつも一緒なのです。サイラス、そのことを忘れないでいて…。わたくしにはあなたを守る家族の姿が視えます。彼女たちの祈りが聞こえます。……何も失われていません」
(……彼女たちの祈りが……)
シャーロッテの瞳はとても美しく哀しく、慈愛に満ちていた。そして、サイラスは彼女が〈本物の巫女〉であることを知った。
シャーロッテの目には、もしかすると母とさやかの姿が視えたのかもしれない。
「ただいま、すぐに…」
シャーロッテの小姓たちはパッと散らばって、テキパキと動き始める。
邸内には豪華な家具と調度品がおかれて、ずっと前からそこに存在したかのように見える。しかし、実際はほんの数分前に魔石で作られた家なのだ。仕掛けはわからないが、大きな花瓶にきれいな花まで飾ってあった。
(…生花かな? それとも造花? ディズ…ーアニメに出てくる「お化け屋敷」みたいだ)
「わたくしの旅行用のおうちです。据付の家具もついていて、とても便利なんです!」
サイラスの心の声が聞こえたように、こちらに顔を向けてシャーロッテが説明する。
(キャンプ用のテントみたいなもの? ずいぶん豪華なテントだけど)
オリバーとサイラスはお茶とお菓子を勧められて、茶器を手に取った。ドイル家では馴染みのない銀食器に、見たことのないお菓子が盛られている。
何の果物か知らないが、アップルパイに似たパイ、おそらくベリー系のタルト、野菜と肉を挟んだサンドイッチのようなパン。
何の肉を使っているのかは不明。リアル謎肉だ。そして、クリームを添えられたスコーンっぽいお菓子もあった。
隣に座っているオリバーが、お茶をひとくち飲んで満足そうに溜息をつく。サイラスもオリバーに続いてお茶を飲んだ。
うん、とても良い茶葉を使っている。
シャーロッテへの好感度がグッと跳ね上がった。やはりおいしい茶葉は重要だ。英国人ほどではないが、前世で日本人のサイラスもお茶にはうるさい。
シャーロッテは興味深そうに、ユウキとサイラスを見比べていた。
「ユウキ、あなたとサイラスはずいぶん似ているのですね? 甥っ子というより、まるで双子みたいだわ…」
ユウキはフッと笑って、サイラスを見やる。
「…どうだサイラス、シャーロッテは面白い女性だろう?」
サイラスとユウキの外見はまったく似ていない。サイラスは中肉中背で、髪の色は水色、目の色はエメラルドグリーンだ。
対してユウキは、大柄で筋肉質。髪も目も黒く、日本人にしては肌はやや浅黒い。それを双子みたいだという彼女には、僕らがどう見えているのだろう?
「シャーロッテさまには、叔父上と僕が似ているように見えるのですか?」
「えぇ、とっても!」
サイラスはちょっと首をすくめる。…どう見ても似ていないと思うんだけど? ノラだって、僕と亡くなった母上がそっくりだと言っていた。母上と叔父上は血縁関係がないから、ノラの答えは「僕とユウキは似ていない」ということだよ。
「……わたくしは他の方とは少し物の見え方が違うかもしれません」
シャーロッテは小首を傾げると、薄い空色の瞳でじっとサイラスを見つめる。
「わたくしの家はもともと巫女の家系です。子供の頃から、ちょっと変わったものを見て生きてきましたの」
シャーロッテは赤い唇をニヤッとさせる。
「サイラスは霊力があるんです。シャーロッテさまが叔父上とサイラスが似ているように感じるのは、そのためじゃないかな?」
オリバーが半分はサイラスに答えるようにいう。オリバーとシオドアには霊力はないが、サイラスとユウキには霊力があるらしい。
この世界では子供の頃に簡易検査を受けて、霊力の有無を確認する。オリバーもサイラスも大きな水晶玉を触って、霊力の有無を検査してもらった。その時の検査は成人式を行ったアトス寺院で行ったのだ。
(僕の触った水晶玉がキラキラ光って、父上とオリバーがすごく喜んだんだ…)
忘れ去っていた過去の記憶が蘇ってくる。
ただし、本格的に霊力を伸ばすのは成人後になる。幼少期から霊力を伸ばそうとすると、身体の成長を阻害して健康を損なうといわれているためだ。
子供が霊力を伸ばしすぎると、霊力のコントロールが利かなくなって「体を喰われる」といわれている。見世物小屋で霊力を披露している人間の多くは体が不自由だったりする。霊力があるために見世物小屋に売られて、子供の頃から霊力を使わされたに違いない。
子供の霊力を伸ばしたいのはやまやまだが、身体を壊してしまっては本末転倒だし、無理に子供の頃から霊力を伸ばす行為は禁止行為になっている。教育虐待みたいな位置づけだ。
「オリバーのおっしゃる通りでしょうね。そもそも、すべての人が同じものを見るわけではありませんわ。クリスティ公爵家は少し変わっておりますし…。男子が生まれても、我が家では長女に婿をとって家を継がせるのです。巫女の能力は、残念ながら女児にしか引き継がれませんから、そういうしきたりなのです。……わたくしの父も婿養子ですわ」
シャーロッテは公爵家という高位貴族なのに、男子ではなく長女とその婿が家を継ぐのだという。女系継承の家であることにびっくりする。
ということは、ユウキは将来、公爵様になるのか? ものすごい出世ではないか!
「クリスティ家の婿になるには、霊力が必要なのです。誰でも良いというわけではありません。ですから、わたくしたちは自分で結婚相手を見つけなくてはなりませんの。…その、霊力は視える者にしか視えませんでしょう? 自分で探さざるを得ないのです」
「それでは、シャーロッテさまが叔父上との結婚をお決めになったんですか?」
オリバーが興味津々という感じで質問する。ユウキとの馴れ初めが知りたいらしい。サイラスもユウキの恋愛話には興味があるので、「オリバー、いいぞ!」と心の中で応援する。
「当時、わたくしは成人して間もない十六歳でした。そろそろ本格的に婿探しを始めなければならないと思っていた矢先に、ミニヨンの花祭りでユウキ様を見つけましたの。ユウキ様は霊力で光り輝いていて、わたくしは『この方こそ、わたくしの探し求めていた夫!』だと確信いたしました」
「花祭りで? おふたりの出会いは花祭りだったのですか? とてもロマンチックですね!」
オリバーが感動している。サイラスも「ほぅほぅ」と頷いている。ユウキは「いや……まだ出会ってはいないんだが…」と微妙に口ごもる。
「わたくしはさっそく、手の者にユウキ様の身辺を調べさせ、どなたか女人の影でも散らつこうものなら、金品を積んでも、暴力を行使しても構わないので早急に対処せよと申しつけまして……」
シャーロッテが頬を赤らめ、瞳をキラキラさせながら語る馴れ初めの物語は、かなり微妙なものだった。要約すると、ミニヨンの花祭りで偶然ユウキを見かけたシャーロッテが、霊力の高いユウキに惚れ込んでかなり強引に求婚したらしい。怪しいストーカーみたいな話を聞かされて、少し反応に困ってしまった。
(この人、すごい美女だけど、もしかしてちょっと変わってる?)
「……というわけで、全身全霊をかけてユウキ様を我がクリスティ家にお迎えしたわけです。わたくしの結婚申し込みを快くお受けくださったドイル男爵には、心より感謝しております」
うーーん、父上も驚いたろうな。
とはいえ、相手が公爵家では簡単にお断りもできないだろう。シャーロッテの話によると、隣国では男性祭司の血筋が王家であり、女性巫女の血筋がクリスティ公爵家になるらしい。
シャーロッテのクリスティ家は、かなりの名門なわけだ! これは間違いなく逆玉の輿だな。
王家とクリスティ家は長年に亘って、互いに嫁取りや婿入りを繰り返してきたのだが、やがて血が濃すぎることが問題になったそうだ。
「長年両家で婚姻を繰り返した結果、王家もクリスティ家も霊力が弱まり、体が弱い子供が生まれてくることがわかったのです。それで、王家と巫女の家の結婚は制限を受けることになりました」
結果として新しい血を求めて、他国で霊力の高い人間を探すようになったらしい。
「そういうわけですので、今回わたくしは花祭りに来るのをとても楽しみにしておりました。ミニヨンの花祭りはわたくしたちふたりの思い出の場所ですから!」
サイラスは「……なんか、聞かなきゃ良かった?」と思っていたが、オリバーはシャーロッテの話がそれなりに楽しかったらしい。
「叔父上が結婚なさった当時、叔父上が遠くに行ってしまうのが寂しくて不満だったのです。僕たち子供は式にも参加できずに、お別れだけが悲しかった思い出なのです」
オリバーはちょっと恥ずかしそうに告白する。顔が赤くなっている。
「子供だったのです。叔父上をお祝いする気持ちも持てないなんて、恥ずかしいことです……」
「まぁ……」
シャーロッテが同情するように目を瞬かせる。オリバーの正直さに心を動かされたのだろう。
「ですから、今回シャーロッテさまにこういうお話を聞かせていただけて、何だかうれしく思います」
「大好きな叔父様を隣国に取られてしまったと思われたかもしれませんが、そうではありません。オリバー、あなたは何も失っていません。むしろ、わたくしという新しい家族を得たのですよ」
シャーロッテは僕の方にも顔を向ける。薄い空色の瞳で僕をじっと見つめる。
「……サイラス、あなたは」
彼女の瞳がふっと翳る。僕を見つめる彼女の瞳に、魂が吸い込まれそうだ。
「どんなに遠くに離れていても、あなたは家族と別れてはいないのですよ。いつも一緒なのです。サイラス、そのことを忘れないでいて…。わたくしにはあなたを守る家族の姿が視えます。彼女たちの祈りが聞こえます。……何も失われていません」
(……彼女たちの祈りが……)
シャーロッテの瞳はとても美しく哀しく、慈愛に満ちていた。そして、サイラスは彼女が〈本物の巫女〉であることを知った。
シャーロッテの目には、もしかすると母とさやかの姿が視えたのかもしれない。