感情が味で分かる令嬢は、偽りの愛を見抜きます~婚約者は腐った生ゴミ味、冷酷な第二王子は極上の味でした~【短編】
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「アルトゥール殿下」
賑やかな会場で、シャルロッテはまるで内緒話をするかのように、アルトゥールの耳元で囁いた。
「どうした?」
「うっ……!」
僅かな一言でも美食の波が襲ってくるようでとろけそうになるが、彼女は歯を食いしばって話を続けた。
「こちらのワインは、エドゥアルト様からです」
「兄上から?」
アルトゥールの眉間が微かに動いた。
「はい。兄弟の和睦の印に、と。ですが……」
彼女は警戒するように周囲に視線を動かしてから、さらに声を落とした。
「中には毒薬が入っておりますわ」
「っ……!?」
アルトゥールの顔が強張る。しかしそれは一瞬だけで、彼はすぐに貴人らしいポーカーフェイスに戻った。周囲に悟られないように、自然な素振りで会話を続ける。
「最近、兄上の側近たちが何やら怪しい動きをしているとは聞いていたが……」
彼はすぐに兄の計画を理解した。
澄まし顔の下には、激しい怒りがみなぎっていく。
もとより、兄と王妃が己を害そうとしているのは分かっていた。現に、幼少の頃より度重なる暗殺未遂を経験していた。
彼らの悪意を跳ね除けるのはもう諦めていたし、もう何の感情も湧かなかった。
だが。
暗殺にシャルロッテを巻き込むのだけは、どうしても許せなかった。
自分の、憧れの令嬢を。