リーガル・ラブ〜イケメン弁護士はお堅い彼女のハートを盗みたい〜
その頃、カフェで食事をしていた壮志は、戻って来たスタッフの男の子に「確かにお渡ししました」と言われて「ありがとう」と答えていた。

(受け取ってくれてよかった。やっぱりそんな規則はなかったか)

頑なに真顔で「規則ですから」を繰り返す優香を思い出して、苦笑いする。

品のあるスーツと華やかなスカーフがよく似合い、いつもにこやかで立ち居振る舞いも美しいが、そのセリフを言う時だけいきなりキリッと表情が変わるのだからおもしろい。

(なかなか強情だな、戸倉さんは)

外資系の一流と言われる企業でインハウスローヤーをしている壮志は、英語を流暢に話し、年収も同年代に比べればかなりいい。
そのせいか女性に告白されることも多かった。

絶えず声をかけられ、それを断るのに精いっぱいで、優香のようにこちらから歩み寄ろうとしているのに突っぱねられたことなどない。
だが戸惑いつつも、そんな優香の態度は新鮮だった。

(規則ですから、か……)

コーヒーを飲みながら自然と笑みがこぼれる。

(バタバタと引越しが決まったが、予想以上に新生活は楽しめそうだ)

カフェの食事も美味しく、ゆったりと過ごせる雰囲気もいい。

立地と間取りだけでこのマンションを選んだため、大して期待はしていなかったが、改めてここに越して来てよかったと感じていた。

急に引越しを余儀なくされた時は精神的にもまいっていたが、今はすっかり立ち直っている自分に驚く。

(あの時は人間不信に陥りそうだった)

心機一転、真っさらな状態で出直そうとしていたところにこの環境は恵まれている。
仕事で疲れても、帰宅するのが楽しみになりそうだ。

(頼りになるコンシェルジュがいるのもありがたい。けど、戸倉さんとは8才も違う。彼女から見れば俺なんかおじさんだろうな。そうか、頑なに断られたのはそのせいか。言い寄って来る嫌な男だと警戒されたんだ)

そう気づいた途端、今までの明るい気分が一気に沈んだ。

(何をうぬぼれていたんだ、俺は。勘違いもはなはだしい。戸倉さんに悪いことしたな。カフェの差し入れも、気味悪がられただろうか。これからは、なるべく彼女と顔を合わせないようにしなければ)

気持ちを引きしめてそう自分に言い聞かせた。
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