リーガル・ラブ〜イケメン弁護士はお堅い彼女のハートを盗みたい〜
初めてのお出かけ
翌朝、10時少し前にサウスタワーのロビーに着き、優香はドキドキしながら肩に掛けたバッグの持ち手を握りしめる。

(この格好、変じゃないかな)

自分の服装を見下ろして軽く整えた。

シアー素材でふんわりした七分袖のブラウスに、淡いパープルのフレアスカートを合わせ、肩下までの髪は緩くヘアアイロンで動きをつけてある。

メイクもコンシェルジュのきっちりしたものではなく、ピンクやオレンジの優しい色合いにした。

バッグからタブレットを取り出し、ハイブランドのインテリアショップのホームページを開いてよさそうなカーテンを検索しつつ、優香は気になっていた。

(どこでお話しするんだろう)

カーテンの相談に乗ると言い出したのは自分だが、前回と同じようにロビーで簡単に提案するつもりだった。

それがわざわざオフの日に私服で10時にと指定されたことで、何かおおごとになった気がする。

カーテンよりそこに気を取られてソワソワしていると、エレベーターが開いて壮志が現れた。

ブルーのVネックカットソーに、ベージュのチノパンというラフな服装で、髪も無造作に下ろしている。

(わあ、なんだか雰囲気が違うな)

そう思っていると同じことを言われた。

「お待たせ。雰囲気がいつもと違うから一瞬誰かと思った」
「おはようございます。えっと、このような服装でよかったのでしょうか?」
「もちろん。じゃあ行こうか」
「あの、どちらへ」

すると優香に背を向けかけていた壮志がポツリと呟く。

「やっぱりツッコまれたか」
「え?」
「いや。カーテンの話をするんだから俺としては部屋に来てほしいけど、君はだめだと言うかなと思って」
「そうですね、それはだめです」
「じゃあカフェに行く? 君は勤務時間外なんだから、問題ないだろう」
「それもちょっとグレーゾーンですよね。もっとこう、誰から見てもセーフだって言われるくらい合法的なシチュエーションでないと……」

真剣にそう言う優香に、壮志は苦笑いを浮かべた。

「君さ、多分法律をかなり勘違いしてると思うんだよ」
「確かにわたくしは法律には詳しくありません。けれど職権乱用とか越権行為とか公私混同など、思い当たる限りは気をつけようと思っています」

ふふっとなぜか壮志は笑いをこらえてから、「わかった」と頷いた。

「それならコンシェルジュの戸倉さんが思う、住人へのカーテンに関するリーガルなアドバイス方法をうかがおう」
「はい。ズバリあそこです」

あそこ?と、壮志は優香が指差す先を見た。

「ロビーラウンジの一番奥、観葉植物の後ろ側でご説明いたします」
「なるほど。こそこそ隠れてという訳か」
「人目を忍んで、とおっしゃってください。わたくしが古賀様にカーテンのご提案をするのは悪い行いではないですが、誰かの目に留まればあらぬ誤解をされたり噂が立つリスクがあります。念には念を入れ、痴漢に間違われないために両手で吊り革を掴むスタイルを模倣したいと思います」
「ははは! それは俺もおすすめしてる」
「ですよね。では行きましょう」

二人でロビーの奥に進み、エントランスから死角となるソファに向かい合って座った。
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