リーガル・ラブ〜イケメン弁護士はお堅い彼女のハートを盗みたい〜
「どうぞ、乗って」

黒いセダンの助手席のドアを開けて、壮志が優香を振り返る。

「はい、失礼します」

革張りのシートに腰を下ろすと、高級なソファのように座り心地がよかった。

「ナビ、セットしようか?」

運転席に回ってエンジンをかけながら尋ねる壮志に、優香は「大丈夫です。ここから大通りを通って10分ほどですから」と答える。

「そう。じゃあ出発するよ」

ゆっくりと車を発進させた壮志に優香が行き先を説明し、あっという間に目的のショールームに着いた。

「すごいな、こんなに本格的なんだ」

ショールームに足を踏み入れると、まるで展示ホールのように広々とした空間に趣きの異なる部屋のインテリアがディスプレイされていた。

「カーテンだけじゃなく、部屋中をトータルコーディネートしたくなるな」
「本当に。このまま再現したくなりますね。憧れます、こんなお部屋」

二人でゆっくりとオシャレなラックや照明、カーペットやテーブルウェアを見て回る。

「このテーブルクロス、とっても素敵」

大きなグリーンのクロスに赤いクロスをひし形に重ね、さらに花の刺繍が入ったシルバーの細長いクロスを横にかけてキャンドルを置いたテーブルセッティングに、優香は惚れ惚れした。

「この食器は別売りなのかな? 全部真似したくなっちゃいます」

プレートやナイフにフォークがきれいに並べられ、まるでフレンチレストランのような雰囲気に優香はうっとりする。

「こういう感じが好きなの?」

壮志が隣に並んで尋ねた。

「はい。でも私のワンルームマンションにはおよそ似つかわしくないです。テーブルの大きさだって全く違いますから」
「そうか。ちなみにこういうテーブルウェアだと、リビングダイニングのカーテンはどんなものがいいと思う?」
「そうですね……。このテーブルクロスの色使いは、季節を先取りして秋冬のイメージだと思うんです。なのでカーテンも、ロイヤルブルーのものにゴールドのジャガード織りのものを重ねるといいかなと。ドレープを作って両サイドに寄せて、タッセルで飾るのはどうでしょう?」
「なるほど。今からオーダーすればちょうどいいかもな」

壮志が近くにいたスタッフにカーテンのオーダーメイドをお願いしたいと話すと、奥のテーブルへどうぞと案内された。

そこもまたホテルのラウンジのようで、洗練された雰囲気に優香はすっかり魅力される。

「とっても素敵なところですね。私、ここに住みたいくらいです」

思わずそうこぼすと、40代くらいの女性スタッフは「まあ、ふふふ」と上品に笑った。

「インテリアでお部屋の雰囲気はガラリと変わりますからね。精いっぱいご希望に沿ったご提案をさせていただきます」

そう言って分厚いカタログをテーブルに広げる。

「カーテンのオーダーメイドですね。どのようなものをお考えでしょう? 寸法はおわかりですか?」

はい、と優香がタブレットを取り出して詳しく説明した。

「かしこまりました。とてもしっかりされた奥様ですね。サイズも細かく教えていただき、助かります。カーテンを重ねるセンスも、色の組み合わせも素晴らしいと思います。早速生地を選んでいきましょうか」
「あ、は、はい」

奥様と呼ばれたような気がするが、訂正するタイミングを逃してしまった。

「こちらの生地のサンプルで、手触りなどもお確かめくださいませ」

差し出されたサンプルを壮志の前にずらすと、壮志は優香の方に押し戻した。

「君が選んでくれる?」
「え? あの……」

すると女性スタッフがにこやかに頷く。

「奥様のセンスなら間違いないでしょうね。こちらのジャガード織りのカーテンは、広げると絵画のように刺繍が美しいので、その日の気分で楽しめますよ」
「わあ、きれいですね。シャンパンゴールドの色合いが派手すぎず、いい感じです。これを上に重ねるとして、その下のカーテンはどんな色が合いますか?」
「そうですね。奥様のご提案のロイヤルブルーに近いものですと、この辺りでしょうか」

優香はじっくり数種類のサンプルを見比べてみた。

「これ、素敵ですね。ブルーグリーンでしょうか。光の当たり具合で色味が違って見えますね」
「ええ。そちらはおっしゃる通り、お部屋の照明を変えるといろんな表情を見せてくれるカーテンです。ベルベットの生地もなめらかでおすすめですよ」
「本当ですね、手触りがいいです。どうでしょう?」

優香は隣に座る壮志に尋ねた。

「いいね、君が選んでくれたら間違いない。じゃあこれにしよう」

スタッフが笑顔で頷く。

「まぁ、仲がよろしいのね。では奥様、タッセルも選んでいただけますか? こんなふうにカーテンレールからキラキラ輝く飾りを吊るすのもおすすめですよ」
「素敵! 星空みたいですね」
「はい。かすかに揺れるたびにキラリと光るのがまさに星のようです」
「本当に。きれい……」

目を輝かせる優香に、壮志がクスッと笑みをもらす。

「ではそれもお願いします。全て彼女の希望通りに」

スタッフは「かしこまりました」と満面の笑みで頷いた。
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