リーガル・ラブ〜イケメン弁護士はお堅い彼女のハートを盗みたい〜
「なんか、ぜいたくな休日になったな。いい気分転換ができたよ」

そうですね、と言いかけて優香は急に思い出す。

「古賀様、今日は木曜日ですよ? お仕事お休みなんですか?」
「ああ。有給でね」
「有給を使ったんですか? もしかして、私が今日オフだと言ったから?」
「いや、そうだけど」
「いやそうだけど? 『いや』と『そう』のどっちですか!?」

切羽詰まった優香の様子に、壮志はおかしそうに笑う。

「戸倉さんのそっちのスイッチはわかりやすいんだけどなぁ」
「そっち? って、どっちですか?」
「お仕事オンのスイッチ。でも、反対側のスイッチの入れ方がわからない」
「反対側とは?」
「んー、隙だらけのホワンとした可愛い女の子のスイッチ」
「そんなスイッチ、私にはありませんよ?」
「あるよ。何度かオンになったもん」

そう言うと壮志は膝の上に両腕を載せて前屈みになり、海を眺めながら誰にともなく話し出した。

「今朝君の姿を見つけた時、ドキッとした。いつもは凛々しくてきれいなコンシェルジュの君が、プライベートの可愛らしい女の子の姿を俺に見せてくれた気がしてね。それに今日の君は表情がくるくる変わる。拗ねたり困ったり、目を輝かせたり、うっとりしたり。カーテンを選んでいる時に奥様と呼ばれて頬を赤らめたり、俺が否定しないで夫婦を装うとドギマギして、だけどカーテンに目を奪われて夢中になったり。魅力的な女の子だなと思ったよ。さっきなんか、スコーンのクリームを唇の端につけたままにこにこしてるから、もう可愛くてさ」

優香はハッとして、慌てて指先を唇に当てる。

「どうしようかな、俺が取ってあげたいなと思ってたら、ナフキンであっさに拭いちゃってさ。残念……って」

話を聞きながら、優香は顔が真っ赤になるのがわかった。

「不思議なんだ、自分の気持ちが」

急に声のトーンが変わり、優香は「え?」と顔を上げる。

壮志は身体の向きを変えて優香を見つめた。

「もう二度と誰かを好きになるつもりなんてなかったから」

真っ直ぐ瞳を射貫かれて、優香は言葉を失う。

「今のマンションには、婚約破棄のために引越しを余儀なくされて来たんだ」
「婚約……破棄?」

信じられない思いで、小さくポツリと呟いてしまった。

「ああ。相手は職場の同僚で、外国籍の人だった。つき合ってほしいという告白も、結婚してほしいというプロポーズも向こうから。俺も、彼女とならうまくやっていけると思って結婚を決めた。彼女が俺の部屋に越して来て同棲を始めて、お互いの国の婚姻手続きを進めていた時だったよ。帰宅したら彼女が別の男と寝室にいた」

優香は目を見開いて絶句する。
心臓をギュッと掴まれたような気がした。

壮志は寂しそうな笑みを浮かべて視線を落とす。
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