リーガル・ラブ〜イケメン弁護士はお堅い彼女のハートを盗みたい〜
「お疲れ様!」

行きつけの居酒屋に行くと、まずは3人で乾杯する。

「はあ、やっと山場を越えたな」

篠原が心底ホッとしたように言い、優香も頷いた。

「篠原さん、オープンからここまでお疲れ様でした。大変でしたよね?」
「いや、優香も夏希もいてくれたから助かった。二人が提案してくれただろ? 女性コンシェルジュも深夜勤務に入るって。そんなこと頼んでいいものかってものすごく葛藤したけど、おかげで救われたよ。あのままだとさすがの俺も身体がもたなかったかもしれない。ありがとな」
「いいえ、篠原さんが倒れなくて本当によかったです」

すると篠原が夏希と顔を見合わせてから、優香に切り出した。

「それでな、男性スタッフも最近新しく増えたし、もう女性の深夜勤務はナシにしようと思って。準夜勤も」
「えっ、そうなのですか?」
「ああ。女性を深夜に帰宅させるのは、たとえタクシーを配車していても心配だ。会社としても何かあってからでは遅い。それを本部に伝えようと思ってる。夏希も賛成してくれた。優香もそれでいいよな?」
「他の女性スタッフのことを思えば賛成ですけど、篠原さんがまた忙しくなりませんか?」
「大丈夫だ。みんな随分仕事にも慣れて頼もしくなったから、俺は日勤を少し減らしてもらうよ。シフトの作成は引き続き優香と夏希にお願いできればと思ってる」
「それはもちろん、喜んで」

優香が頷くと、篠原は肩の荷が下りたように大きく息を吐いた。

「ありがとな、これでようやく落ち着けそうだ。これからはお互いプライベートの時間も大切にしよう。有給も溜まってるだろ? 遠慮なく使えよ」
「お休み、ですか……」

壮志の顔が思い浮かんでうつむくと、隣の席から夏希が顔を寄せる。

「優香、何か予定でもあるの?」
「あ、ううん。そういう訳じゃないんだけど」
「優香が先に有給の希望を出して。その日程を避けて私たちも取ろうって話してるから」
「そんな、私に気を遣ってくれなくてもいいよ」
「いや、それがさ……」

何やら気まずそうな夏希に、優香は「ん?」と首をひねった。
顔を上げると、篠原も同じように視線を落としている。

「どうかしたんですか? 二人とも」

顔を見比べていると、夏希が思い切ったように口を開いた。

「実は私たち、おつき合いすることになったの」
「えっ、ええ!? 本当に? おめでとう!」

優香は自分のことのように嬉しくなり、思わず夏希にハグをする。

「よかったねえ、夏希ちゃん。とってもお似合いのお二人だと思う。でもいつの間に? 全然そんな素振りもなかったのに」
「うん、まあ、色々と大変な時期に仕事の相談してるうちに、なんとなく。で、最近になってようやく落ち着いたから、そろそろデートに行かないかって誘われて」
「それって、篠原さんから? それが告白の言葉ってこと?」
「そうだけど、やだ! 本人の前で言わせないで」

照れて頬を赤らめる夏希に、篠原が言葉を続けた。

「いや、夏希。それを聞かされてる俺の方が何倍も恥ずかしい」
「あはは! そうね」

そんな二人のやり取りに、優香は頬を両手で押さえて身をよじる。

「いいなあ、私までキュンキュンしちゃう。ぜひぜひお二人で有給取ってデートしてね。なんなら旅行に行っておいでよ」
「まさかそんな、いきなり旅行なんて。ねえ?」

そう言って夏希が顔を向けると、篠原はうつむいて何やら考え始めた。

「夏希ちゃん! 篠原さん、旅行に行きたいみたいだよ?」
「嘘、本当に?」
「そうだって! ね、行っておいでよ」
「いきなり旅行!? なんだか恥ずかしいよ」

篠原が「だからそれを聞かされてる俺の方が恥ずかしいんだってば!」と割って入る。

「ふふっ、篠原さんが照れてる。夏希ちゃん、箱根とかいいんじゃない?」
「ちょっと優香、本気で勧めてる?」
「うん。近場だし、ゆっくりできていいんじゃない? ね、篠原さん」

話を振ると、篠原は真剣に頷いた。

「ああ、いいな箱根。夏希はどう?」
「私は、その、もちろんいいけど……」

わあっと、優香が一番盛り上がる。

「行ってらっしゃーい! 楽しんできてね」
「もう、優香ったら気が早い。そう言う優香はどうなのよ?」
「え、私?」

急に壮志のことを思い出して真顔になると、夏希が慌てて顔を覗き込んできた。

「ごめん、優香。余計なこと言って」
「ううん、違うの。大丈夫よ」
「そう? でも何か悩み事があるならいつでも相談してね」
「うん。ありがとう、夏希ちゃん」

笑顔で頷き、そのあとは3人で楽しく食事をした。
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