リーガル・ラブ〜イケメン弁護士はお堅い彼女のハートを盗みたい〜
心境の変化
それから3日後。
優香がコミュニティ棟の受付カウンターにいると、カフェの紙袋を持った西田がロビーに入って来た。

「戸倉さん、お疲れ様」
「西田さん! お疲れ様です。デリバリー?」
「そう、例の外国の方の集まりのね」

ああ、と優香は以前通訳したことを思い出す。

「今日もベジタリアンミール?」
「それがさらに進化して、ヴィーガン用のメニューを頼まれたんだ」
「そうなのね、それは大変」
「マスターも頭悩ませてた。卵とかチーズも除去しなきゃいけないんだよね?」
「そうみたい。乳製品も」
「だよな。これまでその場その場で対応してきたけど、これは本腰入れてメニューを考えなきゃいけないなって。アレルギー対応メニューはあるけど、ヴィーガンまでは考えてなかったから。カフェのお客様は住人の方ばかりだから、当然リピーターだし」

なるほど、と優香も頷いた。

「ヴィーガンにも種類があって、フルータリアンとかロー・ヴィーガン、ダイエタリー・ヴィーガンとかに分けられるみたいですよ」
「らしいね。マスターも色々調べてたけど、結局のところじゃあどんなメニューならいいんだろうって」
「難しいですよね。お肉やお魚、卵、乳製品、はちみつとか、動物由来のものを省いて……。お米とかパン、パスタは大丈夫だから、そこでバリエーションは増やせるかも? でもナッツ類とか、アレルギーの方もいらっしゃるんでしたっけ?」
「そうらしい。今からお客様にそれを詳しく訊いてみようと思ってるんだけど、もし可能なら戸倉さんも来てくれない? アレルギーは何かあったら取り返しがつかないし」
「確かに。じゃあ一緒に行きますね」
「助かるよ、ありがとう」

優香は不在中の案内プレートをカウンターに置いてから、西田と一緒に5階のパーティールームに向かった。

中では大勢の外国人女性が集まり、賑やかにおしゃべりを楽しんでいる。

以前と同じ女性がにこやかに近づいてきて、西田から「サンキュー!」と紙袋を受け取った。

「えっと、ベジタリアンミールがこちら。アレルギー対応メニューがこちらです」

西田の言葉を優香が英語で伝え、最後にこれからのオーダーの参考に、除去する製品や食べられるものを尋ねる。

優香はポケットからメモ帳を取り出して詳しく書き込み、西田に渡した。

エレベーターに乗ってロビーに戻ると、西田が優香に向き直って頭を下げる。

「ほんっとにありがとう、戸倉さん。めちゃくちゃ助かったよ」
「いいえ。これもコンシェルジュの仕事ですから」
「そっか。すごいんだな、コンシェルジュって。俺、もっと気楽な仕事かと思ってた」
「ええ!? ちょっと、西田さん?」

思わず優香は素に戻った。

「ははっ、ごめんって。でもコンシェルジュの中でも戸倉さんが一番すごいと思う」
「そんなことないですよ」
「あるよ、俺にとってはそうなんだ。いつも笑顔で周りを気遣ってるし、所作もきれいで気づいたら目で追ってしまう。おまけに英語もできるし、仕事もできる。俺、戸倉さんみたいな人、初めて好きになった」

え……?と優香が視線を上げると、西田は視線をそらして頬をポリポリと指で掻く。

「あ、しまった。ついポロッと……」

そう呟くとしばし黙り込んでから、意を決したように優香を見つめた。

「勢いで言ってしまったけど、俺の本音なんだ。戸倉さんのこと、いいなと思ってる。よかったら俺とつき合ってほしい」
「あの、私は……」
「あー、ストップ! 速攻断らないで。返事は今じゃなくていいから、ちょっとは考えてみて。じゃあね」

くるりと背を向けて、西田はタタッと去って行った。
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