リーガル・ラブ〜イケメン弁護士はお堅い彼女のハートを盗みたい〜
「古賀様は、内覧は済まされていないと引き継ぎを受けておりますが……」
静かに上昇するエレベーターの中で、手元の資料を確認してから尋ねると、壮志は少し苦笑いした。
「実はそうなんだ。ここに来たのも今日が初めてで……。ちょっとドキドキするね、どんな部屋なんだろう」
「そうですね、と申し上げたいところですが、わたくしは先に入らせていただきまして……。申し訳ありません」
「まさかそんな、ありがとう。おかげで助かったよ」
微笑みかけられて優香も笑みを浮かべる。
(気さくな方だな。落ち着いた雰囲気だけど、まだ30才いかないくらいかも?)
黒髪を短く切り揃え、端正な顔立ちにスラリとした長身。
醸し出すオーラがいかにも仕事ができるといった感じだった。
エレベーターが25階に到着すると、優香は開くのボタンを押して促す。
「どうぞ。お部屋は左側の角部屋でございます」
「ありがとう」
「カードキーはお持ちでいらっしゃいますか?」
「ああ。駐車場のリモコンキーと部屋のカードキーは受け取っておいたから」
「かしこまりました。では後ほどご入居者様専用のアプリをインストールしていただき、デジタルキーを発行いたします。それ以降わたくしが使わせていただいた合鍵は無効となり、このお部屋の合鍵は存在しなくなりますので」
すると壮志は驚いたように足を止める。
「えっ、ちょっと待って。どういうこと?」
優香も部屋の前で立ち止まって向かい合い、説明を始めた。
「このマンションはそれぞれのお部屋だけでなく、駐車場のシャッターや共用スペースのオートロックまで、すべての鍵をスマートフォンに集約することが可能です。つまり完全デジタルキーという訳ですね。BluetoothやGPSの接近検知により、シャッターや玄関に近づくだけでハンズフリーで解錠できますし、指紋認証など複数のデジタル認証と組み合わせることもできます。あとは一時的なデジタル合鍵の発行も可能でして、ご友人やご家族、もしくは今回のようにコンシェルジュに対して、指定した時間の間だけ有効のデジタルキーをメールで送ることもできます。遠隔操作機能もありますので、外出先から鍵の閉め忘れを確認して施錠可能ですし、もちろん今お持ちの物理的なリモコンキーやカードキーも有効ですので、スマートフォンのバッテリー切れの時にも安心かと」
壮志はしばし固まってから視線を落とし、こめかみを指で押さえた。
「えっと、君……戸倉さんだったかな?」
「はい、左様でございます」
「戸倉さんは、近未来からやって来たの?」
はい?と優香は目をしばたたかせる。
「残念ながらわたくしは、ネコ型ロボットではなく人間です」
「じゃあアレだ、Z世代」
「そうなのでしょうか? 2001年生まれですが」
「2001年!? つまり、21世紀ってこと?」
「そう、なります、ね。はい……」
「なんてことだ、生まれた世紀が違うなんて」
えっと……、と優香は返す言葉に詰まった。
「2001年生まれなら、俺と8才も違うのか」
「えっ、そうなのですか?」
ということは、と優香は頭の中で計算する。
(この方、32才? もっとお若いのかと思った)
互いに驚いて顔を見合わせてから、ようやく我に返った。
「失礼、こんなところで立ち話をさせてしまった。中に入ろうか」
「いえ、わたくしはここで失礼させていただきます」
「でもほら、デジタルキーとやらにする方法を教わりたいし」
「では後ほどロビーにお立ち寄りいただけますか? そこで改めてご説明し、合わせてコミュニティ棟のご案内とオリエンテーションも……」
「じゃあ20秒待ってて」
「え? あの」
壮志はカードキーをかざして玄関を開けると、スッと中に身を滑らせ、言葉通り20秒ほどで戻って来た。
「ありがとう、家具の配置も完璧だったよ。今日から気持ち良く住めそうだ。じゃあコミュニティ棟の案内からお願いできる?」
「はい、かしこまりました」
二人でもう一度エレベーターに乗り、1階に下りた。
静かに上昇するエレベーターの中で、手元の資料を確認してから尋ねると、壮志は少し苦笑いした。
「実はそうなんだ。ここに来たのも今日が初めてで……。ちょっとドキドキするね、どんな部屋なんだろう」
「そうですね、と申し上げたいところですが、わたくしは先に入らせていただきまして……。申し訳ありません」
「まさかそんな、ありがとう。おかげで助かったよ」
微笑みかけられて優香も笑みを浮かべる。
(気さくな方だな。落ち着いた雰囲気だけど、まだ30才いかないくらいかも?)
黒髪を短く切り揃え、端正な顔立ちにスラリとした長身。
醸し出すオーラがいかにも仕事ができるといった感じだった。
エレベーターが25階に到着すると、優香は開くのボタンを押して促す。
「どうぞ。お部屋は左側の角部屋でございます」
「ありがとう」
「カードキーはお持ちでいらっしゃいますか?」
「ああ。駐車場のリモコンキーと部屋のカードキーは受け取っておいたから」
「かしこまりました。では後ほどご入居者様専用のアプリをインストールしていただき、デジタルキーを発行いたします。それ以降わたくしが使わせていただいた合鍵は無効となり、このお部屋の合鍵は存在しなくなりますので」
すると壮志は驚いたように足を止める。
「えっ、ちょっと待って。どういうこと?」
優香も部屋の前で立ち止まって向かい合い、説明を始めた。
「このマンションはそれぞれのお部屋だけでなく、駐車場のシャッターや共用スペースのオートロックまで、すべての鍵をスマートフォンに集約することが可能です。つまり完全デジタルキーという訳ですね。BluetoothやGPSの接近検知により、シャッターや玄関に近づくだけでハンズフリーで解錠できますし、指紋認証など複数のデジタル認証と組み合わせることもできます。あとは一時的なデジタル合鍵の発行も可能でして、ご友人やご家族、もしくは今回のようにコンシェルジュに対して、指定した時間の間だけ有効のデジタルキーをメールで送ることもできます。遠隔操作機能もありますので、外出先から鍵の閉め忘れを確認して施錠可能ですし、もちろん今お持ちの物理的なリモコンキーやカードキーも有効ですので、スマートフォンのバッテリー切れの時にも安心かと」
壮志はしばし固まってから視線を落とし、こめかみを指で押さえた。
「えっと、君……戸倉さんだったかな?」
「はい、左様でございます」
「戸倉さんは、近未来からやって来たの?」
はい?と優香は目をしばたたかせる。
「残念ながらわたくしは、ネコ型ロボットではなく人間です」
「じゃあアレだ、Z世代」
「そうなのでしょうか? 2001年生まれですが」
「2001年!? つまり、21世紀ってこと?」
「そう、なります、ね。はい……」
「なんてことだ、生まれた世紀が違うなんて」
えっと……、と優香は返す言葉に詰まった。
「2001年生まれなら、俺と8才も違うのか」
「えっ、そうなのですか?」
ということは、と優香は頭の中で計算する。
(この方、32才? もっとお若いのかと思った)
互いに驚いて顔を見合わせてから、ようやく我に返った。
「失礼、こんなところで立ち話をさせてしまった。中に入ろうか」
「いえ、わたくしはここで失礼させていただきます」
「でもほら、デジタルキーとやらにする方法を教わりたいし」
「では後ほどロビーにお立ち寄りいただけますか? そこで改めてご説明し、合わせてコミュニティ棟のご案内とオリエンテーションも……」
「じゃあ20秒待ってて」
「え? あの」
壮志はカードキーをかざして玄関を開けると、スッと中に身を滑らせ、言葉通り20秒ほどで戻って来た。
「ありがとう、家具の配置も完璧だったよ。今日から気持ち良く住めそうだ。じゃあコミュニティ棟の案内からお願いできる?」
「はい、かしこまりました」
二人でもう一度エレベーターに乗り、1階に下りた。