リーガル・ラブ〜イケメン弁護士はお堅い彼女のハートを盗みたい〜
「今日も一日お疲れ様! 久しぶりの女子会に乾杯」
夏希が明るく言って、二人で乾杯する。
今夜はいつもの居酒屋ではなく、オシャレなワインバルに来ていた。
「お料理も美味しいね。脂っこくなくてヘルシーな感じ」
生ハムとチーズのサラダやブイヤベース、パエリアをシェアしながら、まずは食事を楽しんだ。
仕事の話や篠原とのデートの様子を楽しく聞いていると、最後に夏希が切り出す。
「それで? 優香は最近どうなの?」
「うん、仕事は順調。住人の皆さんも優しいし、業務にも随分慣れたから」
「じゃあ、プライベートか。いつも何を考え込んでるの? 片想いの相手のこと?」
「片想いじゃなくて……」
ついポロッとそう話してしまった。
夏希は黙って真っ直ぐに優香を見ながら、次の言葉を待っている。
これ以上は隠し通せないと、優香は思い切って夏希に話すことにした。
「実は今、好きな人がいるの」
「そう! よかったね。片想いじゃないってことは、両想い? おつき合いしてるの?」
優香はうつむいたまま首を振る。
「どうして?」
「だってその人、マリナ・ヴィスタに住んでるから」
夏希は返事をしない。
どうやらかつてのことを思い出し、優香の心境を察したようだった。
「やっぱり、だめだよね? 住人とコンシェルジュがおつき合いなんて」
膝に載せた両手をギュッと握りしめていると、夏希が労わるような口調で言う。
「優香、そんな決まりはないよ?」
「でも私は嫌なの。もし以前のように、コンシェルジュが結婚相手を探して付け入ろうとしているって噂が立ったらどうしようって。私のせいで他のコンシェルジュまで悪く言われたら耐えられない。それなら私の気持ちは封印しなければ。私一人の恋愛にそれほどの価値はないって。だけど……どうしても好きなの、あの人のことが」
気持ちのままに一気に全てを話すと、ポロポロと涙がこぼれ落ちた。
夏希は腕を伸ばして優香の頭をくしゃっとなでる。
「優香ったら、何言ってるの。恋愛の価値なんて、測れるものじゃないでしょ? 人生の一部なんだから」
「人生の、一部?」
涙で頬を濡らしたまま顔を上げると、夏希は優しく笑って頷いた。
「そうよ、恋愛は生きて行く上での大切な道のり。その行く手を自分で塞いでしまったら、優香はこの先の自分の人生をどうやって歩んでいくの?」
「それは……」
「その場にうずくまったり、別の暗い道を選んだり、来た道を引き返したりするの? ちゃんと自分が進むべき道を見つけられているのに」
「進むべき、道?」
「そう。だって大好きなんでしょ? その人のことが。明るく優香の道を照らしてくれる人なんでしょう?」
「うん、そうなの。一緒にいるとすごく楽しくて幸せで。私をいつも優しく包み込んでくれる人。ずっとずっとそばにいたいと願ってしまうの」
夏希は少し驚いたような表情を浮かべてから、ふふっと笑う。
「すごいわね、その彼。優香がそんなふうに好きな人のことを話すの、初めて聞いた。いつだって恋愛に消極的だったのに。それはもう間違いなく、優香の運命の人よ」
「だけど私、おつき合いを断ってしまったの。他の住人の方にどう思われて、なんて言われるかって考えたら、怖くて……」
「そっか。まあ、気にすることないとは思うけど、優香の性格だから悩んじゃうんだよね。それなら別の選択肢もあるよ」
「別の選択肢?」
「そう。篠原さんに話して、違うマンションに異動願いを出すの」
それは、と優香は咄嗟に首を振った。
「やっぱりマリナ・ヴィスタがいいの?」
「うん、あのマンションが好きなの。ずっとあそこで働きたい。だから余計に悩んでしまって……」
「なるほどね、居心地悪くなりたくないんだ。うーん、じゃあその彼が別のマンションに引越すとかは?」
「そんなの! 絶対にだめ。私のせいで引越すなんてことになったら、それこそおつき合いはきっぱりお断りする」
前のめりで訴えると、夏希は小さくため息をつく。
優香は申し訳なさに身を縮こめた。
「ごめんね、夏希ちゃん。うじうじ悩んでばかりいて」
「私に愚痴をこぼすのはいいよ。でもね、優香。本当にその人のことが好きなら強くならなきゃ。自分の気持ちをしっかり貫いて、彼の想いにもきちんと応えるの。びくびくしてたら誰も幸せになれないよ。相手の人の幸せだって、優香次第なんだよ」
「私、次第?」
「そうよ。優香はその人の幸せは願わない?」
「願ってる。誰よりも幸せになってほしいの、過去にたくさん傷ついた人だから」
そう、と夏希は優しく微笑む。
「それなら優香が幸せにしてあげなきゃ。ね?」
「うん、幸せにしたい。私もたくさん幸せにしてもらってるから」
「そっか。なーんだ、めちゃくちゃラブラブじゃない?」
いい人に出会えてよかったね、と言われ、優香は涙をこらえて頷いた。
夏希が明るく言って、二人で乾杯する。
今夜はいつもの居酒屋ではなく、オシャレなワインバルに来ていた。
「お料理も美味しいね。脂っこくなくてヘルシーな感じ」
生ハムとチーズのサラダやブイヤベース、パエリアをシェアしながら、まずは食事を楽しんだ。
仕事の話や篠原とのデートの様子を楽しく聞いていると、最後に夏希が切り出す。
「それで? 優香は最近どうなの?」
「うん、仕事は順調。住人の皆さんも優しいし、業務にも随分慣れたから」
「じゃあ、プライベートか。いつも何を考え込んでるの? 片想いの相手のこと?」
「片想いじゃなくて……」
ついポロッとそう話してしまった。
夏希は黙って真っ直ぐに優香を見ながら、次の言葉を待っている。
これ以上は隠し通せないと、優香は思い切って夏希に話すことにした。
「実は今、好きな人がいるの」
「そう! よかったね。片想いじゃないってことは、両想い? おつき合いしてるの?」
優香はうつむいたまま首を振る。
「どうして?」
「だってその人、マリナ・ヴィスタに住んでるから」
夏希は返事をしない。
どうやらかつてのことを思い出し、優香の心境を察したようだった。
「やっぱり、だめだよね? 住人とコンシェルジュがおつき合いなんて」
膝に載せた両手をギュッと握りしめていると、夏希が労わるような口調で言う。
「優香、そんな決まりはないよ?」
「でも私は嫌なの。もし以前のように、コンシェルジュが結婚相手を探して付け入ろうとしているって噂が立ったらどうしようって。私のせいで他のコンシェルジュまで悪く言われたら耐えられない。それなら私の気持ちは封印しなければ。私一人の恋愛にそれほどの価値はないって。だけど……どうしても好きなの、あの人のことが」
気持ちのままに一気に全てを話すと、ポロポロと涙がこぼれ落ちた。
夏希は腕を伸ばして優香の頭をくしゃっとなでる。
「優香ったら、何言ってるの。恋愛の価値なんて、測れるものじゃないでしょ? 人生の一部なんだから」
「人生の、一部?」
涙で頬を濡らしたまま顔を上げると、夏希は優しく笑って頷いた。
「そうよ、恋愛は生きて行く上での大切な道のり。その行く手を自分で塞いでしまったら、優香はこの先の自分の人生をどうやって歩んでいくの?」
「それは……」
「その場にうずくまったり、別の暗い道を選んだり、来た道を引き返したりするの? ちゃんと自分が進むべき道を見つけられているのに」
「進むべき、道?」
「そう。だって大好きなんでしょ? その人のことが。明るく優香の道を照らしてくれる人なんでしょう?」
「うん、そうなの。一緒にいるとすごく楽しくて幸せで。私をいつも優しく包み込んでくれる人。ずっとずっとそばにいたいと願ってしまうの」
夏希は少し驚いたような表情を浮かべてから、ふふっと笑う。
「すごいわね、その彼。優香がそんなふうに好きな人のことを話すの、初めて聞いた。いつだって恋愛に消極的だったのに。それはもう間違いなく、優香の運命の人よ」
「だけど私、おつき合いを断ってしまったの。他の住人の方にどう思われて、なんて言われるかって考えたら、怖くて……」
「そっか。まあ、気にすることないとは思うけど、優香の性格だから悩んじゃうんだよね。それなら別の選択肢もあるよ」
「別の選択肢?」
「そう。篠原さんに話して、違うマンションに異動願いを出すの」
それは、と優香は咄嗟に首を振った。
「やっぱりマリナ・ヴィスタがいいの?」
「うん、あのマンションが好きなの。ずっとあそこで働きたい。だから余計に悩んでしまって……」
「なるほどね、居心地悪くなりたくないんだ。うーん、じゃあその彼が別のマンションに引越すとかは?」
「そんなの! 絶対にだめ。私のせいで引越すなんてことになったら、それこそおつき合いはきっぱりお断りする」
前のめりで訴えると、夏希は小さくため息をつく。
優香は申し訳なさに身を縮こめた。
「ごめんね、夏希ちゃん。うじうじ悩んでばかりいて」
「私に愚痴をこぼすのはいいよ。でもね、優香。本当にその人のことが好きなら強くならなきゃ。自分の気持ちをしっかり貫いて、彼の想いにもきちんと応えるの。びくびくしてたら誰も幸せになれないよ。相手の人の幸せだって、優香次第なんだよ」
「私、次第?」
「そうよ。優香はその人の幸せは願わない?」
「願ってる。誰よりも幸せになってほしいの、過去にたくさん傷ついた人だから」
そう、と夏希は優しく微笑む。
「それなら優香が幸せにしてあげなきゃ。ね?」
「うん、幸せにしたい。私もたくさん幸せにしてもらってるから」
「そっか。なーんだ、めちゃくちゃラブラブじゃない?」
いい人に出会えてよかったね、と言われ、優香は涙をこらえて頷いた。