銀河の雫
今回で仙台に配属されるのは二回目。

四十歳での課長昇進は異例のスピードだと噂されているらしい。


仕事人間の俺には、読書以外、これといった趣味はない。


結婚など、興味もない。

仕事で認められれば、俺のプライドは満たされる。

今から誰かに合わせて生活?

いやいやいや、考えられるはずもない。

結婚なんて一切、考えたことはない。

……いや、一度だけあったな。

けれど、それは一瞬、魔が差しただけだ。


業務開始。

課内から提出される稟議書をチェック。

イレギュラーな事案があれば支店に確認の電話を入れる。

午前中は、いつものように慌ただしく過ぎた。



チャイムが鳴る。

ビルの一階まで降り、コンビニで弁当を買うと、そのまま休憩室に戻る。


俺の席は、暗黙の了解で決まっている。

……周りの席には誰も座らない。

俺が近寄りがたいオーラを放っているのだろうか。

ところが今日は俺の指定席の前で、女性スタッフが二人で談笑している。

……珍しいこともあるものだ。


あぁ……そうか、今日から派遣社員の研修をしているのだったな。

そっと、いつもの席に座る。

俺より少し年下だろうか。

必然的に会話が耳に入ってくる。




テレビのリモコンを研修に持ってきた?

ペンケースと間違えて?

間違いなく天然だね、あなた。


「月浦しずくさんって、マジ、ウケる~……」



……月浦……しずく?

俺は、その名前に聞き覚えがあった。

同姓同名か?

いや、そんなにありふれた名前じゃないだろう。

十五年振りか……

俺は偶然にもまた、彼女に出逢ってしまったのか……



それから俺の想いは、少しずつ積み重なっていくことになる。

まるで最初から、そうなるのが宿命だったみたいに。

パズルのピースがはまっていくみたいに。

いつも自分の感情を、上手くコントロールして生きてきた。

なのに、最近の俺はまるで、俺じゃなくなって行くみたいだった。

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