銀河の雫
「嘘つかれたら、相手を信じられなくなるよね」

薫さんの声に我に返った。

「本当と嘘を絶妙に織り交ぜて話すから、いまだに何が本当で何が嘘だったのかも分かんないくらい」

彼女はただ、黙ってうなずく。

「男性不信もいいとこ。……あの頃の私、かなり病んでたかも」

マンションの屋上に立ち、飛び降りればすべて終わる……なんて少しだけ、考えたことも同時に思い出していた。




「それで仙台に?」

「うん、実家から近いし。東京で独りで育てるのは、私には無理だろうって思った」

「そっか……」

言葉に詰まった彼女に、ほほえみながら、うなずいた。

しばらく重苦しい沈黙が続いた。



「……しずくさんさ、私にとっての橘さんみたいに、今まで運命感じた人っていた?」

スマホの画面を見ながら、何事もなかったかのように話題を変えてくる。

「運命か、残念ながら……ない、かな」

思い返してみたけど、うんざりするような思い出しか見つからなかった。

「まだ出会ってないだけかもね」

こちらをちらっと見る。

「あはは……私、子持ちの三十八歳だよ。もう、さすがにないって」

自分は恋愛向きじゃないのかも知れない。

いつも騙されたり、くよくよ悩んだり。

恋愛してないときのほうが、精神的に安定してる。

それに独りで息子を育て上げると決めたんだ。

まずはそれが最優先。
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