銀河の雫
……子育てが終わったら、また独りになる。
そう考えると、少しだけ心がきゅっと苦しくなった。
けど、今は、そんなことを気にする余裕なんてない。
「じゃあさ、初恋とかはどうだった?」
「初恋か……」
子どもの頃に記憶を馳せた。
「高学年くらいの男の子だった」
「うん?」
薫さんはスマホをいじるのをやめてこちらを見た。
「……低学年の頃、私、いじめられっ子でね。……助けてくれたお兄さんがいたなと思って」
「そのお兄さんが好きだった?」
当時のことを細い糸を手繰るように思考を巡らせた。
アスファルトにゆらゆら揺れる陽炎。
遠くから聞こえる蝉の声……
駄菓子屋の店先で、私の髪の毛をそっと撫でる優しいほほえみ。
あれは、いつの出来事?
あの少年は誰だった……?
忘れかけていた記憶が、途切れ途切れの映像のように浮かんだ。
「うん、初恋っていうかは分かんないけど、ドキドキした記憶はある……かな」
「今、どこで何をしてる人?」
「分かんない。名前も覚えてないし、どんな顔だったのかも……」